次回診療報酬改定の大きな焦点の一つとして急性期医療の複線評価がクローズアップされています。

 複線という意味は、原徳壽厚生労働省保険局医療課長が最近、しきりに提唱している高度急性期病院と一般急性期病棟(病院)という表現に端的に示されています。

 一般急性期病棟が何を指すのか必ずしも明確ではありませんが、全日本病院協会(西澤寛俊会長)と同協会をはじめ日本病院会、日本精神科病院協会そして日本医療法人協会で構成する四病院団体協議会(略称・四病協)が以前から提案している「地域一般病棟」を具体的にイメージして構わないと思います。

 では地域一般病棟とは、どのような考えに立つものでしょうか。

 詳細は全日本病院協会病院のあり方委員会報告書(2007年版37頁)に譲りますが、軽度〜中等度の肺炎、脳梗塞等、内科疾患、一般的な骨折等、外科疾患、慢性疾患の急性増悪などを入院対応疾患とし、地域ケアを中軸としたトータル・ケアサービスの役割などを担当するとされています。リハビリテーション機能やケアマネジメント機能が必須とされ、急性期病棟からの受け入れ、在宅医療の後方支援機能などが担当する機能とされています。

このため発症早期から関わりを持つケアコーディネーター(いわゆるMSWよりもっと広い役割をイメージ)や、回復期リハビリテーション病棟ではありませんがリハビリテーションスタッフの配置などが要件として想定されています。

地域によっては一つの大病院が多くの入院医療を提供しているケースも稀ではありません。こうした病院では、「一部の病棟が地域一般病棟になることによって、利用者を中心とした全人的かつ効率的な医療提供が可能」(病院のあり方に関する報告書2007年版37頁)となります。

 

入院患者の多くは

一般急性期と慢性期患者

 

 地域一般病棟に注目してほしい理由は、入院患者の多くは一般急性期と慢性期患者だという事実です。

 ナショナルセンターや著しく専門特化した県立病院などを除き多くの病院の入院実態はこれではないでしょうか。にも関わらずDPCとすることが急性期病院の要件とばかりにいたずらに高次急性期病院を目指そうとすることは、過度の医療機器投資を誘発するばかりでなく病床運営も難しくさせます。

 また、高次急性期病院が益々平均在院日数短縮を求められる一方で、療養病床再編の渦中にあって後方支援病床の減少と空洞化が進んでいます。

 この結果、高次急性期病院の病床運営がたちゆかなくなる危険性も現実味を帯びてきます。

 その意味で地域に必要なのは、医療の質に担保されたこうした小回りの効く医療・介護・福祉の地域ネットワークを中心的に担当する地域一般病棟です。

 

全て老健転換と結論づける前に

療養病床にも検討してほしい

 

 療養病床を有する病院の皆さんには、「地域一般病棟は急性期の問題であり関係ない話」でしょうか。

 私はそうではないと思います。

 大半の療養病床の転換先は老健と見られています。

 急性期病院の後方病院の役割は、残念ながら老健でとることは難しい。

 また、大量に定員増となる老健でいつまで満員状態の利用を見込むことができるのでしょうか。

とりわけ郊外や山間部にある病院では新規の入所者獲得は老健に転換したからといって容易ではないでしょう。

 

 問題は、地域一般病棟の実現可能性です。

亜急性期入院医療管理料を創設する上で貢献した一人として知られる高橋泰国際医療福祉大学教授は、高度先進医療を担当する急性期と地域一般病棟のそれぞれDPCに基づく算定を行う2階建ての急性期医療提供体制を提案しています。亜急性期入院医療管理料という病室類型は多分に地域一般病棟の考えを反映したものでもあります。

また、1021日に開かれた中医協診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会では事務局を担当する厚生労働省保険局医療課からDPCを軽度な急性期と重度な急性期の2グループに分けて、再編する考えが提示されました。次回改定でこのままの勢いで地域一般病棟が実現するのかどうか現時点ではまだ保障の限りではありません。

しかし、近い時点での実現が大きく期待される状況になってきたことは間違いありません。

急性期、慢性期を問わず地域医療を担当している病院関係者の皆さんが地域一般病棟を巡る議論に関心を寄せられることを願ってやみません。

 

なお、療養病床の一律老健転換の動きなどに対する疑問と提案をメディウェル通信クラヴィス1110日号で行っています。

 

関心のある方は当社コンサルティング事業部

(担当・関原)までご連絡願います。

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