次回診療報酬改定がどのような形で進むのか。
 それを占う上で関心をひく講演が1月16日、札幌市内で行われました。
 講演者は高階(たかがい)恵美子日本看護協会常任理事。
 北海道看護連盟が主催した特別講演会で「看護の現状と将来展望」をテーマに講演しました。
 年末に答申された次回介護報酬改定をはじめ多岐にわたる内容にふれた講演ですが、その中で次回診療報酬改定と関連して注目されたのが看護技術評価の拡大に向けた強い意欲の表明です。

リンパ浮腫指導管理料など高く評価
 高階常任理事は、「人の生きる力を守る、支える仕事」と看護を位置づけた上で、2008年度改定で創設された「リンパ浮腫指導管理料」及び「糖尿病合併症管理料」にふれ、看護技術を評価するものとして高く評価しました。その上でリンパ浮腫指導管理料は入院中1回の算定、糖尿病合併症管理料は外来で月1回の算定に限定されていることに対して、患者の立場から考えて外来、在宅というように拡大していく必要があるものではないかと問題提起。新たに看護技術を評価させていく必要がある看護行為とともに適用の場と算定機会を広げていく視点が求められていると呼びかけました。
 糖尿病合併症管理料は、看護職独自の対応ができる意味で「外来看護の幕開け」といえる性格を持っていると指摘。担当看護師の要件にある「5年間の糖尿病足病変の看護経験」とは、看護師の勤務には糖尿病患者を看る機会は当然あることから、ハードルとして高いものではなく、適切な研修も2日間とクリアーしやすい施設基準になっていると指摘。臨床現場での積極的活用が制度の拡充、拡大を準備していくと臨床現場の積極的対応に強い期待感を示しています。
 こうした問題意識は次回診療報酬改定に臨む日本看護協会の基本スタンスを示唆するものとして注目できるものです。

退院調整加算は「看護職が病院の顔に」
 また、高階常任理事は、退院調整加算の創設がもたらした意味として「あの病院の〇〇さんの退院指導なら安心できる」というように介護サービス事業所などから看護職が「病院の顔として評価」される状況が全国で生まれていると、その制度創設に伴う波紋の広がりに注意を促しました。病気だけを見るのではなく24時間の患者(とその家族)の生活のリズムに合わせた視点から各種サービスの組み合わせを考えていこうとする看護の視点が背景にあってのことと説明。そうした役割がとれる看護提供が看護職の将来を実り豊かなものにしていくという認識を示しています。

創設される居宅療養管理指導の意義
 さらに高階常任理事は、次回介護報酬改定で創設される「居宅療養管理指導」に言及。居宅療養している要介護者(要支援者)やその家族の療養上の不安や悩みを解決し円満な療養生活を送ることを可能とするため、生活上の支援を目的とした看護職員による相談等を評価するものと説明しました。「在宅療養を支えるための命綱」として積極的にその役割を評価するとともに、看護職判断の対応が期待されている点を指摘。必要となった時点でスムーズな訪問看護の流れをつける「つなぎのサービスとしての役割」を説明。在宅療養生活支援の視点を広く看護職員が持っていく意義の理解を求めるとともに、訪問看護の期待される役割と活動領域の広がりの反映という見方を明らかにしています。
 高階常任理事の講演は、専門職としての看護の役割発揮とは何か、診療報酬制度などにどのような形でそれが表現されているのかを示しながら、その役割理解を呼びかける内容。とりもなおさず次回診療報酬改定などに臨む日本看護協会の基本姿勢を示唆するものとして注目できるものです。
 なお、高階常任理事は診療報酬、介護報酬、訪問看護を日本看護協会で担当しています。
 当日の講演の要旨は、メディゥェル通信クラヴィス2月10日号で紹介する予定です。