ある病院理事長から、「病院の医師数標準の基準は年度平均か、直近1年平均か」という質問を受けました。というのも医師数標準(必要医師数)に関して、当該病院を管轄している厚生局から、「外来患者数と入院患者数の“直近1年間” を基準にして計算しなければならない」との指導を受けたというのです。今まで“年度”で医師数をカウントしていたのに、“直近1年間”と言われ驚いたそうです。というのも同院では、ここ3ヶ月ほど外来患者数・入院患者数ともに、昨年度比で大幅に増加しているからです。実際に精査していないものの、仮に“直近1年間”となれば、もう1人医師が必要になるかもしれないからです。そこで当編集部に相談が持ち込まれたわけです。

年度であって
直近1年間ではない

 まず結論から言うと、“年度”であって“直近1年間”ではありません。
 この点に関しては、『医療法施行規則第十九条第3項』に明記されています。以下に関係法文を記載します。

第十九条 法第二十一条第一項第一号 の規定による病院に置くべき医師、歯科医師、看護師その他の従業者の員数の標準は、次のとおりとする。
一医師 精神病床及び療養病床に係る病室の入院患者の数を三をもつて除した数と、精神病床及び療養病床に係る病室以外の病室の入院患者(歯科、矯正歯科、小児歯科及び歯科口腔外科の入院患者を除く。)の数と外来患者(歯科、矯正歯科、小児歯科及び歯科口腔外科の外来患者を除く。)の数を二・五(耳鼻いんこう科又は眼科については、五)をもつて除した数との和(以下この号において「特定数」という。)が五十二までは三とし、特定数が五十二を超える場合には当該特定数から五十二を減じた数を十六で除した数に三を加えた数
(以下割愛)
3第一項の入院患者、外来患者及び取扱処方せんの数は、前年度の平均値とする。ただし、新規開設又は再開の場合は、推定数による。
(最終改正:平成二〇年一一月二八日厚生労働省令第一六三号)

 このように明確に法律上規定されています。医師数を決定する入院患者・外来患者数の平均値は、赤字で示しているように“前年度の平均値とする”と明記されています。よって直近1年間との解釈は誤りとなります。

社会保険事務所から
厚生局への移行による混乱?
 この点に関しては厚生局側が何らかの勘違いをしているものと思われます。考えられるのは診療報酬上の施設基準による医師数と医師数標準の混乱かと思われます。昨年10月に社会保険事務局から各都道府県の厚生局に業務が移管されました。そのためある病院関係者からは「業務上の混乱が見られる場合がある」とも聞きます。
 しかし厚生局側への移管からまだ1年も経過していないわけですから、様々な混乱もあるでしょう。ですからそのあたりを斟酌して、不明な点があれば法文や施設基準要綱を示しながら事情を説明し、やんわりと指導の改善を促すことが良いのではないでしょうか。あえて角付き合わせる必要などなく、このような機会の話し合いこそ、病院側と厚生局側との信頼関係の契機になるかもしれないのですから。
 【コンサルティング事業部 関原】