2月4日都内で社団法人全日本病院協会(西澤寛俊会長)による『平成21年度介護報酬改定説明会』 が開催され、鈴木康裕厚生労働省老健局老人保健課課長が『平成21年年度介護報酬改定について』と題して講演を行った。

加算アップの意義を強調
 鈴木課長は、今回改定の解説を次回以降の改定の方向性を示しながら行った。
 そのなかで鈴木課長が繰り返し強調したのは、介護の質を担保するために加算に重点を置いたことだ。例えば今回改定の意図を次のように語っている。「今回改定では、きちんとやっているところに加配することを念頭に置いた。基本料を上げると一律に評価されることとなり、広く薄くということになる。そのために加算部分で点数をつけた」。
 実際に今回改定では改定前から質の担保に留意し、有資格者を多く採用するなどした事業所には、間違いなくプラス改定になった。例えば多くのサービスで、『介護福祉士が40%以上配置されていること』もしくは『3年以上の勤務年数のある者が30%以上配置されていること』などの要件がつけられているからだ。
 鈴木課長は「今後も基本点数部分の上昇は難しいのではないか」とも付け加えていることから、今後の改定にあってはますます“質の担保・向上”という観点からの点数配分がなされていく傾向になるだろう。その際は当然“加算”ということになり、それを意識する・しないで事業者間の格差が広がることになるのではないだろうか。

次回以降はアップ厳しい
制度上の整理にも言及
 鈴木課長は、昨今の国の財政赤字を考えると今回改定の介護報酬3%アップしたのとは逆に、次回以降改定において介護報酬が上げられる可能性は極めて低く、良くても現状維持か限定的な特定の項目への加点だろうとの認識を示した。
 そのためにも事業者には様々な工夫が必要とし提案も行った。
 例えば介護事業は利幅が少ない分、例えばマイナス改定になった場合、影響を受けやすい。そのためにもサービスの多種化が必要で、例えば特定の1種類のサービスに専門特化することは危険で、施設もしくは同法人内で多種のサービスを行うことが経営上の安定を担保するだろうとしている。

 さらに制度上のあり方にも言及して、社会保険である介護保険が担うべきサービスのあり方と範囲に関して、訪問介護における“生活援助”のあり方について、介護保険の範囲ではなく高齢者福祉として考えることが妥当ではないかとした。次いで“補足給付”のあり方に関しても、同様に介護保険ではなく生活保護給付として捉えるべきではと私見も述べている。

 今回説明会で鈴木課長が指摘したように、介護事業者にとって“質の向上”が今後生き残るための絶対条件となるということだろう。具体的には人員配置を手厚くすることや、有資格者を確保すること、また確保した人材の労働環境に配慮して長期間の勤務を可能にすることが求められることになる。今回改定で3%アップが実現したが、その分今後の改定でのハードルが高くなり、今まで以上にしっかりとした運営と経営が求められるだろう。
【コンサルティング事業部 関原】