いま、北海道内では地方の地域中核病院が相次いで存続の危機、崖っぷちに立たされています。
 具体名は避けますが、この10年間、医師引き揚げの「逆風」でも地域の二次救急患者受入率7割を維持し続けてきた地域中核病院がその一つです。本年4月の外科医全員引き揚げに続き、消化器内科医全員の引き揚げが10月に実行に移されたためです。地域医療を支えていく上で、根幹とも言える消化器内科・外科の両翼をもぎとられた状況が現れています。二次医療圏内で入院機能を有しているのは、離れた地にある有床診療所1施設を除くと唯一この病院だけです。
 この病院ばかりではありません。
 来年4月循環器内科医引き上げの連絡により、循環器診療空白地域に一転して追いやられることが確定した地方の市立病院など、「明日はわが身」の逆風が依然として吹き荒れています。二次対応医療機関が風前の灯火の状況に追いやられることは地域社会の空洞化、崩壊を助長するものに他なりません。

 こうした事態を前に、徳田禎久北海道病院協会理事長(全日本病院協会病院のあり方委員会委員長)は次の視点を強調しています。
 「郡部の主産業である農業と漁業は北海道を支える重要な経済基盤。地方であればあるほど、その産業基盤を支えるための医療提供体制が必要とされています。その支える基盤がなくなると農業、漁業も成り立たなくなり、地域社会が崩壊してしまいかねません」という指摘です。医師供給の窓口である大学に、その深い理解を期待するとともに返す刀で徳田理事長は訴えています。
 「郡部にあっては、多くの地域で医療機関が少なく選択と集中は不可能。(だからこそ)いまこそ“連携”“ネットワーク化”を真剣に検討・実行し、“地域完結型”提供体制の構築を」と呼びかけています。
 また、徳田理事長は「地方にあってはそもそも看護職員が絶対的に不足」していることを踏まえ、看護職員の医療行為に“規制”をかけてしまうことにつながりかねない“特定看護師”制度の議論に対しても慎重な議論を期待しています。

 地方では入院医療機関は限られるばかりでなく、多機能性を期待されます。また、看護職員に代表される医療専門職の数も限られてしまいます。
 私は2006年度改定と同時に北海道内の病院を襲った特別入院基本料への転落に際して、次のような提案をしたことがあります。それは次の通りです。
 人口1万人以下の自治体に存在する病院にあっては一般病床、医療療養、介護療養のそれぞれの類型を有している場合、15対1看護職員体制であることを条件に60床以内を1看護単位(病棟)として複合病棟の運営を認める。医療療養、介護療養それぞれについて、より手厚い看護職員体制を保障するものであるためです。
 改めてその提案をしたいと思います。