札幌医科大学で『札幌医科大学医学部学生の将来調査の進路に関するアンケート』の集計結果が公表されました。
 このアンケートは地域医療崩壊の原因として、専門医志向および都会志向の傾向を確認するとともに、地域への医師供給機能を有する大学教室制度への関心低下の背景を調査し、若い医師の大学離れに対する具体的な対策を考えるためのものです。631人の調査対象のうち回答は368人で回答率58%となりました。現在の医学部生の意識が如実に表れた結果となっています。

4割が地域医療従事に前向き
子供の教育問題も枷(かせ)に
 プライマリ・ケア志向、専門医志向の割合はそれぞれ50%と同等ですが、多くの学生が都会志向でした。しかし44%の学生はキャリア形成後(特に20年目以降)、最終的には従事したい(してもいい)と答え、40%は一時的という条件で、地域医療への従事に肯定的でした。このように4割もの潜在的な人員が認められるわけですから、医師登録制度などで比較的短期間で医師をローテートするような組織作りなどは有効ではないでしょうか。
 そのなかで地域医療への従事において最も求められる条件は『協力の得られる医療機関・医師』77%、『子供の教育環境』53%でした。前者の場合、地域の他医療機関の医師との連携を求める声が多く、孤立しない環境整備が必要でしょう。行政が主体となって連携組織作りをすることも効果的かもしれません。
 後者に関しては、地域医療に従事する医師の家族の問題であるだけに、医師不足で悩む地方の市町村が主体となって解決しなければならないものであると言えます。例えば進学校とインターネットで結ぶなど、都市部と同等の教育を受けられる仕組み作りなどがあげられるのではないでしょうか。

80%以上が大学外の研修希望
91%札医専門講座に興味
 全学年において80%以上の学生が、大学以外の初期研修プログラムを希望しています。これは医局の観点からすると惨憺たるものです。その際にイメージとして『封建的・閉鎖的』との悪い感情をもつ生徒が多数いることが分かっています。
 しかし他方5、6年生においては91%の学生が初期研修後に札幌医科大学の専門講座への所属を検討しており、これは初期研修後の進路選択の際に重視する『指導医の充実』のためであるようです。このような潜在的な人材をいかに取り込むかが大学にとっても重要な課題となるでしょう。
【コンサルティング事業部 関原】