4月に迫った介護報酬改定。
 地域包括ケアシステムの確立に向けたさまざまな施策が導入されるなど、注目すべき事項がいくつもあります。
 その中で、あえて注目してほしいと思うものの一つに、新設される『入所前後訪問指導加算』があります。
 入所前後訪問指導加算の算定要件は次の通りです。

 対象者は、入所期間が1カ月を超えると見込まれる方。
 その「入所前30日以内または入所後7日以内にその入所者等が退所後生活する居宅を訪問し、施設サービス計画の策定および診療方針を決定した場合」を評価するものです。
 算定できるのは1回。介護報酬は460単位です。
 4,600円ですから、新設されるものとしては高い単位設定がされているといっても過言ではありません。
 その点もそうですが、注目したい1番の理由は、入所前に退所後を見通した計画を立てるという発想です。
 当たり前のことのように思われるかも知れません。
 ただ診療報酬を見ても、退院前になると各種退院調整加算が新設されるなど、なぜか退院、あるいは退所が近づいて初めて居宅状況理解が求められるというものにとどまっています。
 これは残念ながら今回の診療報酬改定でも変わりません。
 だからこそ介護保険制度で入所前に退所後を見通した計画を立てる発想と、その評価が実現される意味は大きいと思うのです。
 こうであってこそ初めて一連の医療介護福祉サービスの継続した提供と、その意味・必要性が準備されるのではないでしょうか。


「質の高い外来看護が求められる時代」
 この間、新設される回復期リハビリテーション病棟入院料1をどう評価するかを中心に、リハビリテーションの現場、あるいは病院事務部長の皆さんと話す機会を得ました。
 その中で、回復期関係の方々から共通して出された問題の一つに、回復期リハビリテーション病棟を退院した後についての関心、あるいは継続したリハビリテーション提供の流れができていないのではないか、あるいは放置されているのではないか、という点があります。
 その思いは、「ここにこそ、つなぎの積極的機能が必要ではないか」ということにつながります。

 また、看護関係の方々との意見交換では、こうした問題も念頭に次のような意見が出されました。
 「退院間近になって退院後の生活をどうするか考えるのでは遅いのではないか。これからは(緊急入院でない限り)入院前の外来時点で、家族状況や家屋環境の把握ができ、退院後の生活再設計まで患者・家族の皆さんと一緒に組み立てられる、一連の経過が見える外来看護が求められるのではないか」(石田昌宏前日本看護連盟幹事長)というものです。
 ですから私達の希望は、2年後の改定ではぜひ診療報酬にもこうした評価を新設させたいということになります。
 そのためにも外来看護のあり方の積極的見直しが期待されているという思いにつながります。
 こうした一連の過程、つながりの継続性というものに対して、介護をはじめとして臨床現場の問題意識が成熟してきているのだと思います。
 それを制度がいかにすくい上げられるか。ひとえに現場の実績にかかっていると思います。
 その意味でも介護報酬で新設される「入所前後訪問指導加算」が活用されることを願ってやみません。

 そうした現場の問題意識を反映する全国規模の大会が本年10月、札幌で開催されます。
 「新しい医療介護福祉の連携を求めて〜拡げよう繋げようリハケアの輪〜」と題したところに、上記と共通する問題意識が伝わるかと思います。
 大会名は「リハビリテーション・ケア 合同研究大会 札幌2012」。
 この大会についてはあらためて取り上げたいと思います