医師、看護師、さらには理学療法士に代表されるリハビリテーション専門職種など、地域偏在と地域格差が大きく横たわっている現実があらためて浮き彫りにされました―。11月10日、都内の東大医科学研究所を会場に行われた「現場からの医療改革推進協議会第7回シンポジウム」での第1セッション、「医師・看護師養成問題」で明らかにされたものです。
 冒頭、発言に立ったのは、何かと注目を集めている黒岩祐治神奈川県知事です。まず黒岩知事は、神奈川県の人口当たりの看護職員数は全国最低、医師数は全国39位という実状を明らかにしました。今後、全国のどこよりも急速に高齢化が進むことがはっきりしている県の状況を考えた場合、「数の問題の克服は喫緊の課題であり、養成数を増やさなければならないのは明らか」として参加者に理解を求めました。現実には医学部新設や准看養成施設の廃止に対して強い抵抗を受けていると説明。その中でライフイノベーション国際戦略総合特区を舞台に今までと異なる医学部を構想していること。そこでは国際的医療人材を育てる医学部として、国際的に開かれた人材養成と最先端の医療提供ができる場とすることで世界各地から志のある優秀な人材を集め、そして神奈川発信で世界に輩出していきたい考えをあらためて主張しました。
 同様に深刻な医師不足に悩む新潟県からは、泉田裕彦知事がビデオで医師不足の現状について訴えました。ここでは県単位にすると見えない地域実状があること、生活圏単位で見た場合、医師不足の状況はよりはっきり問題として見えてくると地方の事情に対する理解と視点を提唱したことが強く印象に残りました。 
 
福岡市と相馬市のPT数は6対1
参加者をあぜんとさせたのが福岡豊栄会病院に勤務する若き理学療法士、鉄田貫大君からの報告です。7月に10日間ボランティアとして被災地である相馬市で運動器健診に携わった体験から、「生活不活発病を予防できたとは言い難い結果」が見られたと報告しています。地元の対応が遅れているためでしょうか。
 鉄田君は、自分の勤務する職場のPTが現在33人いること、震災前の相馬市には7人のPTしか存在しなかったこと。PT1人当たりの人口数は、福岡市の989人に対して相馬市は5,160人に達することを明らかにするとともに、「養成施設が福岡県では14校あるのに対して福島県は1校、とそもそも養成時点で大きな違いがあったことを背景とした結果であり、自分自身驚いた」と率直な感想を述べています。そして「震災後に生活不活発病を啓発しても遅いことが分かった」と指摘しています。 これは重要な指摘です。
 実際、PT不足の中で身体状況に合わない杖の長さや補助用具の選択などにその影響は現れており、仮設住宅の動線や手すりの位置・段差も問題があることを明らかにしています。これを行政の怠慢と指弾することにさほどの意味はありません。鉄田君が指摘するように「PTは動作を見抜く視点と動きやすい環境づくりを得意としています。寝たきり予防・心身の復興にはその地で働くPTが必要」という視点こそ重要です。地域での専門職不足の解消、あるいは当面の支援があって初めて問題解決の道筋が開かれることを教えています。