有床診療所、往診専門クリニック、在宅医療支援病院、地域中核病院、家庭医療センター、地域包括支援センターから次々に取り組み報告がされたというと皆さんは何を想像されるでしょうか。
 答えは、在宅医療連携拠点事業所活動発表会です。
 地域包括ケアシステムを具体化させていくための取り組み、課題などを明らかにしていくことを目的に、平成23年度から厚生労働省が全国各地でモデル事業を実施している在宅医療連携拠点事業。2月2日、北海道札幌市で北海道・北東北ブロックの拠点事業所活動発表会が行われ、各地の地域事情を踏まえた在宅医療ネットワークづくりへの取り組みが報告されました。地域の医療介護従事者の「顔の見える関係」づくりと、連携体制を構築するためのネットワーク化の工夫や各地の課題の解決策や市民に対する普及啓発活動など、地についた取り組みが相次いで紹介されました。
 注目したいのは、発表が医師会、病院、有床診療所、家庭医療クリニック、地域中核病院、行政直営の地域包括支援センター、往診クリニックなどというように在宅医療連携拠点の役割をとることは特定の病院や施設でなければならない理由はないことを実証したことです。地域の状況などによってさまざまな開設DSCN4016【全体写真】主体がその役割をとれること、多職種連携とそのネットワーク化は機関特定ではなく、形作られることを示唆した点にあります。あえて医療機関にひきつけた表現をすると、規模の大小、地域によっては病院、診療所の別にかかわらず、また入院ベッドを持っていなくとも連携関係の中で対応できる仕組みづくりにさえ成功可能なことを示しています。
 発表者からはありませんでしたが、特別養護老人ホームや老人保健施設がその役割をとることができることを示唆していると私は受け止めました。

 例えば釜石市を事業主体に復興を内包した地域包括ケア連携の取り組み、「在宅医療連携拠点チームかまいし」。         
 発表者は釜石市医師会の寺田尚弘氏。「3.11」からの地域再興という課題を抱えながら地域包括ケアシステムを具体化していく立場から、「他地域においても超高齢社会に対応したまちづくりに有用、普遍的であると思われる」取り組みが報告、説明されました。 詳細な紹介は差し控えますが、まだ多くの地域住民が仮設住宅暮らしを余儀なくされている中で、「社会的健康、精神的健康が大きく損なわれており、身体的健康をいかに守り、維持していくのかが大きな課題でありコミュニティー再生が必要」、特に次世代を想定し、子育て、出産が可能となる街づくりをという提起が参加者の胸を打ったのは間違いありません。
 在宅療養支援病院として在支診などと連携、災害時対応などに活動領域を広げている「とよひら・りんく」の取り組みは、在宅療養支援診療所や医療・介護サービス事業者を結び付け、紹介・被紹介のコンサルテーション機能を作り出していくとともに市民啓発活動などに取り組みを拡大している状況を明らかにしています。
 複合型有床診療所が育てる自治体の枠を超えた「潟上・南秋けあねっと」の取り組みは、地域事情に踏まえたネットワーク形成ができるかどうかこそが問題であり、連携のコア機能を有床診療所が担当することはなんら不思議なことではない現実を証明しています。
 地方、特にへき地などでの対応可能のエールを送る意味も持っていると私は受け止めました。担当しているのは、秋田県中央部の5市町村、人口約6万人、面積約550?と単一自治体の枠を超えた連携ネットワークの組織化を進めている秋田県潟上市で有床診療所小玉医院。老人保健施設や訪問看護ステーションなどを開設運営する複合体の中核施設です。医療崩壊により基幹病院がなくなった中で、その現実を対応困難とするのではなく、「各事業所間のつながりが今まで以上に必要となっている」と受け止めた発想です。
新たな会議体を持たず既存の
在宅ケア連絡会活かし多職種連携実現
 新たな会議体を持たず既存の在宅ケア連絡会を活かし、多職種連携を実現している北海道札幌市の手稲家庭医療クリニック。家庭医・総合内科医による幅広いグループ診療と重なり合うことで可能となっている点にも注目いただきたいものです。地域中核病院は急性期医療に専門特化すべきという意見が高まる中で、「地域に看取りをもどす」をテーマに地域中核病院が対応している取り組みがあります。
 十和田市立中央病院がそれです。
 ごく自然な人生の締めくくりの在り方として「地域に看取りをもどす」ことを目標に、在宅医療連携拠点事業に取り組んでいます。人口約6万5千人、高齢化率25.8%、農業を主産業とするマチで市内唯一の総合病院である十和田市立中央病院はどう行動しているのか。ぜひ多くの人に知ってほしいと思います。
 夕張市、横手市、札幌市東区での「タッピ―ねっと」の取り組みなど、詳細はメディウェル通信クラヴィス最新号(2月10日号)で10ページにわたりレポートしています。併読いただければ幸いです。