2月13日に厚生労働省で行われた第237回中医協総会の議題の1つに「在宅医療について(その1)」が挙げられていました。この議題の中では、社会保障・税一体改革と平成24年診療報酬改定の経緯や在宅医療を取り巻く現状についてなどを議論する中、1つ注目したい議題がありました。それは『4.保険診療の運用上、不適切と考えられる事例について』です。

 平成22年度診療報酬改定で在宅患者訪問診療料の分類を施設の累計ではなく、同一建物の訪問人数により整理したことは記憶に新しいと思います。そして平成24年度改定では、自宅やマンションなどを問わず1人目のみ訪問診療料1の830点、2人目以降は自宅へは初・再診料等+処置料、有料老人ホームなどの特定施設等では訪問診療料400点、マンション等の特定施設以外では200点を算定するようになりました。同じ建物内への複数の患者を往診する場合は移動の負担が少ないため、2人目以降の点数を調整して反映しています。
 一昨日の中医協の『4.保険診療の運用上、不適切と考えられる事例について』では、特定施設等の共同住宅にいる患者に対して、患者の選択を制限するおそれがある事例について議論されました。内容としては、『高齢者用施設の新設にあたって、特定の医師に入所者を優先的に紹介することの見返りとして、診療報酬の20%のキックバックを要求している』といった患者の選択を制限する事例。また過剰な診療を惹起するおそれがある事例として『診療所の開設者の親族が経営する高齢者用施設の入居者約300名のみを対象に訪問診療を行っているもの』といった具体的な事例を挙げています。参考資料では、東京新聞の『看取りビジネス「在宅」扱い 暴利生む』といった見出しの記事を紹介しています。
 さらに、マンション業者が医療機関と居住者の診療独占契約を結び、その見返りとして診療による収益の一部を報酬として要求するケースや、医療機関が特別の関係の施設等に短時間で多数の患者に訪問診療を行う事例を課題に挙げられていました。昨年、厚生局の方と意見交換をしている際にも、ドクターと施設が高齢者施設と専属契約を結び患者の囲い込みをする人たちがいること。また、その施設に診療訪問する診療所は名ばかりの診療所で施設へ出向く以外の患者受け入れは行っていないことを問題視していました。その問題のある医師と施設らは、マンションの1室を診療所として届けて看板は掲げていますが、あえて患者からの連絡が来ないように連絡先は知らせていません。
 国が在宅での診療を推進する一方でその裏をかくような行為となります。このような利益のみを追求した行為についてはいずれ規制や制裁があるでしょうが、この極一部の問題がある医師と施設らの行為によって、正当な診療行為を行っている大多数の医療者らへ悪影響が出ることがないようにしなければなりません。
 総会の議事次第は一昨日付(2013年2月13日付)の厚生労働省ホームページの新着情報に掲載されています。より詳細な情報については一読いただければ幸いです。

 なお、2月25日発行(Clavis387号掲載予定)の厚生労働省北海道厚生局【ブログ】古家先生クラヴィスの古家隆司統括指導医療官のコラム「『保険診療』―そのこころ」でも在宅医療について触れており、上記のような問題点を指摘しております。今回がコラム最終回となり、古家先生の医師としての医療に対する思いや指導医療官の立場での思いが込められています。次回のクラヴィスも併読いただければ幸いです。
                                                               【コンサルティング事業部 隅廣】