「準、準、深、深」という言葉が飛び交ったというと皆さんは何を想像するでしょうか。
 7月4日、北海道看護協会(平山妙子会長)主催・企画による「ガイドラインに基づく勤務表作成研修会」の演習でのやりとりです。
 言うまでもなく準とは準夜であり、深は深夜勤務を指しています。夜勤の連続回数は2回まで、勤務間隔をきちんと取ってほしいという内容をまとめた日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を踏まえたやりとりです。研修会の受講対象者は、勤務表を実際に作成している看護管理者、または勤務表作成を指導している看護管理者の皆さんです。
 ガイドラインについての講演、必要な人員配置の施設基準の講義に加え、小グループ単位で演習を行い、実際に困っている課題とその解決策の知恵を共有しようという初めての試みです。設定された定員は50人。実際の参加者は130人を超えた点に、夜勤・交代制勤務の現実に対する臨床現場、病棟看護管理の関心の高さと悩みの切実さを受け止めることができます。
 「看護職が生涯を通して安心して働き続けられる環境づくり」を掲げる日本看護協会がその一環としてまとめたのがガイドラインです。同時に、就業の継続を支えるものは何かということにとどまらず、潜在看護職の復職支援につながる内容をはらんでいる点を看護管理者と看護職はもとより人事労務をはじめとする病院経営管理参加者職、事務部門に承知していただきたいものでもあります。
 ガイドラインの解説と改善事例の紹介などを講演した奥村元子さんは、看護職の夜勤をめぐる国の動きと診療報酬対応の経緯を明らかにしながら、ガイドラインは勤務環境見直しのヒントを盛り込んだものであり、勤務編成の基準をどこに置くべきかなどのポイントを説明していきました。詳細の紹介はクラヴィス誌上で行いたいと思いますが、適切な労働時間管理の必要と関連して人事労務管理を総合的に再点検すること、とりわけ「一律から多様性への転換」を強調した点が重要です。ここで一律とは画一といって差し支えありません。

「公平、平等の勤務表作成」は正しいだろうか

 ここから具体的にどのような問題が提起されるでしょうか。
 例えば公平、平等ということでシフトに入れない看護職の採用を控えてしまうことは、シフトに入ることができなくなった看護職を退職に追い込む作用をもたらすのではないかという問題提起になります。いろいろな形の働き方を可能にする発想の転換が望まれているという問題意識です。「休日希望の勤務表作成から看護目標達成のための勤務表作成」という表現は、それを象徴しています。
 休憩と仮眠の違いと仮眠の取り扱いなどは、人事労務担当の皆さんが知っておいても損のないものです。演習では先に挙げた問題をはじめ、二交代制と三交代制を組み合わせた場合の夜勤帯での仮眠・休憩は取れるのかといった質問が出され、実際に運用している病院の師長が実態を説明するなど、具体的な議論と意見交換が進みました。 三交代制での正循環のシフト編成例などは病院経営管理職全体に知ってもらいたい内容です。
奥村さん
 講師を務めた日本看護協会の奥村元子さん(労働政策部看護労働課看護労働・確保対策担当専門職)は次のように今回の研修会企画を受け止めています。
 「実際に病棟で勤務表を作成している最前線の皆さんのマネジメントの取り組みに触れさせていただくことで全国共通の悩みや課題、創意工夫を知ることができました。同じ立場の人がお互いを知り合う、勤務表作成のヒントを得ることができることで自信をつけていくことも期待できるのではないでしょうか。他院の勤務表をみる見る機会はおそらくほとんどの人が持っていないと思います。その意味でも刺激となり参考になる研修会になったのではないでしょうか。企画された北海道看護協会の皆さんに敬意を表するとともに、日本看護協会としても中堅職に対する教育支援の参考とさせていただきたいと考えています」。

 願わくば日本看護協会をはじめ都道府県看護協会には、医療機関の人事労務担当者と看護管理職が同席できる研修会を企画してほしいとあらためて感じました。
 以前から提案しているように、病院団体と共催の形で研修会が実現することを期待しています。