「平均入院日数と勘違いしているのではないか。長く入院する必要のある患者さんもいらっしゃれば短期間で退院できる患者さんもいらっしゃる。入院医療にはそうした包容力が必要であり、【日数設定など問題があるとしても――筆者追記】それを配慮した考えで平均在院日数は設定されている。(特定除外廃止問題は)平均在院日数が少し延びる程度かどうかという問題にしてはいけない」――1日、中医協総会における中川俊男委員の発言の一部です。
 周知のように中川委員は日本医師会副会長です。また、今回あらためて中医協委員に就任されたばかりです。 亜急性期病棟の創設などに対して舌鋒鋭く問題の所在を追求する診療側委員を代表する一人としての発言が注目される中川委員ですが、実はそうした発言の底流に流れているのが臨床実態に対する深い理解であることに私は注目したいと感じました。
 中川委員が問題とした発言は、次のようなものです。
 「50床の病棟で90日を超えて入院している患者が5人の場合、その他の患者の平均在院日数が15日までであれば、全体の平均在院日数は18日以下となるというのだから問題ないのではないか」という内容の発言です。
 ここには臨床実態と違う数字処理の問題で片づけられる傾向が潜んでいるばかりでなく、そもそも平均在院日数の算定方式を理解せず、平均入院日数のように誤解しているとしか思われない制度理解の問題をはらんでいます。
臨床現場の現実感覚を欠いた
数字だけの議論の危うさ
 中川委員の指摘は、まさにそうした現実感覚を欠いた数字の独り歩きや、長期入院を必要とする患者に対する理解と視点、共感という医療の基本を喪失させかねない風潮に対する批判そのものと私は受け止めました。
 私は先に会員制情報誌『クラヴィス』誌上で、15日以内の平均在院日数病院であれば特定除外廃止しても何の問題もないという最近見受けられる議論に対する違和感を表明するとともに、数字のつじつまがあうかどうかが問題という議論を取り上げました。
 当日、万代恭嗣委員が指摘したように、筋ジストロフィー、神経難病患者などへの対応が低下していることなどは危険なシグナルであり、以前から本ブログでもしばしば問題としているように、新たながん難民などを生み出すことにならないかどうかなど慎重な議論が必要とされています。その議論からの出発――それこそを中川委員は問題としたのではないかと思います。そのことが医師配置人員の低い療養病床が看護職員配置だけで救急をはじめ急性期患者を等しく受け入れるという亜急性期入院病棟構想に対する批判にもつながっているのだと思います。

 以上の問題意識からあらためて医療関係者の皆さんが7対1、10対1一般病棟入院基本料における特定除外廃止の是非、亜急性病棟創設に伴う療養病床評価に対する中医協議論に関心を寄せられることを訴えたいと思います。