2月12日の答申直後から全国各地に激震が走っています。「これはもう『倒産危機』以外の何物でもない」‥。以前から懇意にさせていただいている医師からのメールです。
 また、医師紹介等を担当させていただいている弊社ヒューマンリソース事業部も12日直後から訪問先で次々に質問や対応策などのご相談を受ける機会が増えており、原稿を執筆している本日時点(21日)でも全くやむことはありません。
 「長期入院の是正」を名目とした次回改定に一部の医療機関が苦慮されていると考えればよいのでしょうか。実は「悲鳴」にも似た思いと、「厚生労働省の真意はどこにあるのだろうか」という戸惑いの声を上げているのは在宅医療に取り組んでいる医療関係者だというと、皆さんは驚くでしょうか?むしろ当事者そのものではないでしょうか。「在宅推進は次回改定の主たる目的。地域包括ケア推進の立場からもありえない」という反論があるかもしれません。
「同一の建物での複数訪問」は
 4分の1以下の点数に引き下げ
 4月に迫った次回改定で、次の変更が盛り込まれることになりました。
 在宅時医学総合管理料を一つの例に見ますと、在宅療養支援診療所、または在宅療養支援病院で病床を有する場合、現在は調剤薬局に処方箋を発行する場合、5,000点を算定します。これが4月改定以後は同一建物での同一日の複数訪問の場合、1件あたりの点数が1,200点に引き下げられます。なんと4分の1以下の引き下げです。5点や10点どころではない大幅な引き下げです。
 診療報酬という公定価格の世界でこれはありうることなのでしょうか。しかも在宅推進を目的とする長期入院の退院促進などの施策と併存するところに私を含め当惑は広がるばかりです。
 この施策は「在宅不適切事例の適正化」の中に位置付けられています。これ自体否定するものではありませんが、これでは不適切ではないものまで含め「懲罰」をかけるに等しいのではないでしょうか。適切と不適切の線引きの難しさを理解したとしても、単純に同一建物を同一日に複数訪問した瞬間に点数が4分の1となる‥。
 地域包括ケアの推進を目指し、地域ネットワークの拠点機能に熱心に取り組んでいる病院事務長様からは、訪問関係だけで年間1,000万円以上の減収は必至といった声が次々に寄せられています。在宅専門診療所の皆さんからは経営そのものの存続が不可能となるといった切実な声が上がっています。
 「在宅医療への取り組みは後退させざるを得ない」、それがおしなべての結論となる事実を前に私たちはどう考えるべきなのでしょうか。
 果たして在宅医療推進とこの施策はどう説明付けられるのか。厚生労働省は早急に現場の不安と先行きに対する不信感に応えるべきだと思います。