部分自立を大切にする姿勢が期待されているのではないか。算定上限日数で縛りをかけることは正しいのだろうか――。これは3月16日、都内で開催された第1回慢性期リハビリテーション学会(江澤和彦学会長)で提起された問題意識と実践の取り組みです。
 同学会は日本慢性期医療協会(武久洋三会長)が中心となって発足に至ったものです。まず慢性期リハビリテーションという考え方に注目いただきたいのです。

 周知のように急性期リハビリの対応が立ち遅れています。同時に算定上限日数が設定されることにより、ある時期を超えるとリハビリの必要性はないというような機械的発想を誘発していることも否めない事実です。
 それは医療から考えて、また患者・家族の生活性の回復支援という視点から考えても妥当なのかどうか、診療報酬・介護保険のどちらで対応するのかは別に、大切な問題を提起していると思うのです。算定上限日数超え患者に対するリハビリ提供という取り組みをどう受け止めるべきかという問題です。また、リハビリを身体機能の回復が可能かどうかに限ると、例えば神経難病患者に対する維持期リハビリは無用ともされかねません。実際、神奈川県下のある病院は、一時期数百万円単位で点数カット(月額です)をされていたと聞いています。

 今、なぜ慢性期リハビリテーションなのか。
 開催にあたって江澤学会長は、次のように説明しています。
 「超高齢社会を迎えるにあたり、今後、医療はドラスティックに機能分化され、慢性期医療のフィールドは拡大の一途をたどります。人の尊厳を守り、自立支援を実現するために、慢性期リハビリテーションの果たすべき役割もかつてなく大きくなり、重要性がますます際立ってきます」。
慢性期リハビリの役割の広がりという意味で注目したいのは、武久会長が提唱する部分自立の考え方です。それは次の五つの柱で構成されています。

食事自立
移乗自立
移動自立
排泄自立
整容自立

の5つです。
 部分自立というと「狭いリハビリを考えている」と誤解されるかもしれません。全くそうではありません。例えば次の提起を考えてみたいのです。
 「経管栄養をしている人が自立歩行を目指すリハビリにどうして積極的になれると思うのか」。
 患者自らの現実性と自発性を促していくことをないがしろにし、歩行が自己目的化されたり、患者の思いを引き出していく発想ではなく健常者に近づけるのがリハビリといった誤った視点から、器械的リハビリを強要していないかという問題提起につながると私は感じています。
 それらを踏まえた廃用症候群リハ評価などについては割愛しますが、ここにはリハビリ観を鋭く問うものがはらまれているのではないでしょうか。
回復期リハ病棟のみならず
問いかけるリハ夜勤と効果
 その意味で回復期リハビリテーション病棟を持つ医療機関などに注目してほしいのが、日慢協会員施設における回復期リハ病棟でのリハ夜勤の取り組みです。
 詳細な説明と資料紹介は割愛しますが、リハ夜勤を行っている回復期リハ病棟の夜間の転倒・転落件数の平均推移によると、平成24年8月から同11月までの4カ月間で100床あたりの平均が22.5件から14.2件に低下しています。
 逆にリハ夜勤なしでは12.2件から19.7件と増えている。調査対象病棟数が少ない限界はあるものの、回復期リハ病棟のあり方を考えさせるものではないでしょうか。
 室内での伝い歩き等で生活行動を広げることができる利用者への生きたリハ動作の創出ではなく、機械的に1日1万歩けるよう義務付ける訓練目標を画一的に設定する発想が置き忘れているものは何かにつながることも感じます。
 ここからは、「この訓練の意味を理解できない」ため退院後、継続した訓練は自宅ではされていないという回復期リハ病棟が今、実践的に突き当たっている課題を乗り越えていくことは困難です。
 当日の学会では、例えば次のような報告がされました。
 On-off現象のため早朝の服薬が困難であったパーキンソン病患者に対して早朝介入をSTが行い、経口服薬の方法を確立するとともに、3食経口摂取を可能としていった取り組みなどは部分自立の意識性から生まれた成果といえます(鳥取県・養和病院)。
 こうした部分自立への取り組みを算定上限を超えていても行うことで、本人の自立と生活行為の広がりを実現している取り組みは患者満足度UPにもつながるのではないでしょうか。