地域包括ケアの多様な動きが広がっています。その一つとして歯科衛生士、看護師、リハビリ職種はもとより(管理)栄養士、医師をはじめ多職種、そして一般市民を含む200人を超える参加者で「のみこみ安心ネット・札幌」の公開研修会が4月12日、札幌市医師会館を会場に行われました。
 死因の第三位を占めるまでに至った肺炎。その半分程度が誤嚥性肺炎と考えられています。だからといって嚥下障害=肺炎を意味するわけではないことがケア、あるいは高齢者ケアを考える場合重要となります。それは地域包括ケアをどう地域で作り上げていくのかということと重なり合う問題を提起しているのではないか。これは同ネットを発足させ、参加されている皆さんに共通する思いです。
 今、時代がどう変わろうとしているのか。北海道で急速に増える高齢者と、特に札幌市内への高齢者の流入が確実に予測される中で、何が地域(在宅)で、病院・診療所・施設等で問われているのか、同ネット発足にあたり中心的役割をとられている一人、橋本茂樹札幌西円山病院リハビリテーションセンター長が熱っぽく問いかけます。
 それを受けて「嚥下障害と誤嚥性肺炎」をテーマとした藤谷順子さん(国立国際医療研究センターリハビリテーション科)、村松真澄さん(札幌市立大学)の講演が続きます。そして北海道歯科衛生士会からの実技指導、摂食嚥下のメカニズムと誤嚥性肺炎との関連性などの鑑別と対応など最新の知識が共有されていきます。
 私的なことですが20年ほど前、北海道口腔看護研究会の発足を考え行動した折にお世話になった歯科衛生士学校の先生と10年ぶりにお会いする中、「多職種が自然に集まる研修会が具体化するとは」と時代の変化をともに実感する場面もありました。

地域全体に対応する感染看護の必要性【補正済3】IMG_0146

 「地域全体をカバーする感染看護のネットワークが強く求められているのではないでしょうか」――4月19日、旭川市内で開かれた第8回旭川感染ネットワーク研修会の会場で会長を務める平岡康子旭川赤十字病院看護部副部長のお話です。
 旭川と言いながら当日の参加者は北海道内一円に及び、800人近い申し込みの中、会場の限界から650人に絞り込まなければならなかったほどです。
 周知のように2年前の診療報酬改定で感染看護
の連携の仕組みが評価されるようになりました。【補正済3】image001
その結果、病・病、病・診連携が着実に広がってきていることは紛れもない事実です。また、多剤耐性菌の流行などを背景に、安全対策上からも感染防止が一段と重要性を帯びています。
 その中で同感染ネットワークの皆さん、あるいは倶知安などで地域感染ネットワーク作りに取り組んでいる皆さんが異口同音に訴えているのが「地域感染防止対策に対する支援制度」です。医療機関間ですと感染看護の診療報酬がつきます。しかし福祉施設などに起きた感染事故に対する対応などに対する社会的財源評価はありません。
 本来、保健所が即応できればいいのかもしれません。しかし、今、保健所にその機能を求めるのは酷な状況にあることも事実です。また、最新の感染知識が必要とされている時、病院等にいる感染看護師の果たす役割と期待は大きいものがあります。同時に、先に挙げた医療機関間連携と院内対応で業務過多の状況が生まれてきているのも明らかです。ややもすると感染対策ネットワークの落とし穴となりかねない社会福祉施設はもとより、保育園などで何かが起きた場合、直接の支援体制をとることもできません。こうした点の対応体制を保証できる体制などが必要とされているのではないか。これは形を変えた地域包括ケアシステム作りの提起ではないか――私はそう感じています。
 なお、当日の「あなたの通院している歯科は大丈夫?歯科器材の洗浄・消毒・滅菌管理」と題した島崎豊愛知県厚生連海南病院感染制御部課長による講演や、満田年宏横浜市立大学准教授による「接触伝播する病原体の感染対策」、塚本容子北海道医療大学準教授による「患者安全をどう考えるか:医療施設における管理者の役割と感染管理者が知っておきたい知識」などの教育講演は、いずれも最新かつ出色の内容となっています。これらは当日の抄録集で読むこともできます。最近、増えている軟性内視鏡に関する高階雅紀大阪大学医学部付属病院材料部部長・病院教授の講演は、早々耳にすることができるものではありません【抄録集に関するお問い合わせ0166-22-8111(内線8127)旭川赤十字病院医療安全対策室】。

 先に挙げた摂食・嚥下対策を地域化する取り組みとともに、地域発信の多様な地域包括ケアシステム作りに向けた息遣いを感じることができるのではないでしょうか。
 それを社会的に支える制度作りもまた、今、期待されているのではないでしょうか。