「未来を見据えた地域医療を考える」〜働き方の検証、人員不足の解消、ICTの活用〜をテーマに7月6日札幌市内で第18回北海道病院学会が開催されました。特定非営利活動法人北海道病院協会(理事長・中村博彦社会医療法人医仁会理事長)0001 (16)が主催する同学会は発足当初から際立った特徴を持っています。医療専門職種ごとの研究発表に留まらず当初から医療技術・患者満足度、チーム医療、事務部門などを含むセッションで構成されています。医療専門職種のセッションに参加すると院内組織の一翼を担っている立場からの効率化や業務改善、多職種連携の取組などが盛り込まれています。多職種で構成されている病院組織の役割は何か----その問題意識と各職種の専門性が折り合わされている学会、それこそが北海道病院学会の際立った特徴と私は創設以来感じ取っています。
 本学会主催のシンポジウムや各職能セッションから私が注目した点は「多職種連携」や「チーム医療」をテーマとした発表が数多く見られたという点です。


〇地域包括ケアネットワーク現実化の問題意識

 「多職種連携」や「チーム医療」をテーマとした発表を突き動かしているエネルギーは「医療従事者の問題意識」ではないでしょうか。
 「患者・家族の生活を見据えたチーム医療とは何か?」その答えを探して実践し地域包括ケアネットワークを作っていく「アクティブな問題意識」だと私は感じています。
 

 立ち入った内容の紹介は紙幅の関係からできませんが、「環境音を意識して〜快適な入院生活を目指して」(社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院)、「業務内容に特化した訓練を行い、職場復帰に至った失語症例」(社会医療法人医仁会 中村記念病院)、「尿失禁の改善に関連する要因について〜栄養とコミュニケーションに着目して〜」(医療法人 新さっぽろ脳神経外科病院)などの演題からは、生活性(リズム)をどう再構築していくかという臨床現場の問題意識が伝わってきました。

 別の形で同じ問題意識を表現しているのが「看護職と介護職が協同するために〜それぞれの専門性を活かしたケアを行うための体制作り〜」(医療法人社団博愛会 開西病院)、「回復期リハ病棟における看護師・介護員の連携を目指して〜メッセージボードの活用〜」(社会医療法人社団 高橋病院)などの発表です。
 

〇地方の公立病院維持の在り方を示唆する病棟類型再編などの発表

  地方市立病院として病棟類型再編(急性期主体にこだわらず他病院との機能分化を中心にした地域ニーズに対応した病棟類型再編----古川注)により赤字病院から2年連続黒字達成の続報を発表し、会場を沸かせた「士別市立病院 長嶋 仁院長」の報告からは「広域過疎」「人口減少」「高い高齢化率」等の現実に直面する地方都市病院の機能維持と地域社会を支えていく報告があり、改めて参加者への励ましとなりました。

 機械の導入により服薬管理指導を中心とする薬剤業務を可能とした結果、薬剤師確保に至った報告「機械仕掛けの薬局〜ザ・ビッグバトル」(医療法人社団医修会 大川原脳神経外科病院)は機械導入による合理化だけに留まらず専門性の役割と結び付けて論じられている点は示唆に富むものでした。

 病院管理学の視点から職員確保の施策を示唆した演題「泌尿器科検査科における適正職員数と検査数の関係」(社会医療法人北腎会 坂泌尿器科病院)は個人的にも注目していました。単科専門病院の勤務時間配分の実態、専門病院として必要とされるエコー検査増、それに伴う職員増員の可否を紹介しています。今後こうした報告が一段と増えていく可能性を感じています。 

 

〇地域ソーシャルワークの取組 

 そうした中で今回の北海道病院学会で強く印象付けられたのは、地域ソーシャルワークの取組が「夢物語」ではなく既に現実の行動となっている実態を私は強調したいと思います。
 ICFを活用した入退院支援を多職種連携により回復期リハ病棟で実践している函館市の「社会医療法人 盒局賊 廚諒鷙陲和牘仝紊寮験荳胴獣曚妨かっての実践であることがわかります。独自開発した「ICFシート」は、1患者ごとに多職種で作成、「生活目標」「短期目標」を必ず設定する仕組みとしています。「ケースカンファレンス」以外に「ADLカンファレンス」「チームリーダー制」の導入を行い、チームリーダーは職種特定ではなく「ソーシャルワーカー」「看護」「リハビリテーション」のいずれかが症例によって決まる仕組みとしています。

 
 これは「多職種連携・協同」から「多職種統合時代」へのチーム力が期待される「地域包括ケアネットワーク時代」の組織原理ではないでしょうか。また、フレイルシートにより「薬剤師」「放射線技師」「管理栄養士」「検査技師」「歯科衛生士」も議論に加わり、ADL向上に貢献しているという側面も注目したいものです。
 コミュニケーションアプリを導入、島内の限られた医療介護資源である病院、特養、救急隊との連携や情報共有を積み重ね「島内完結地域包括ケアネットワークの構築」を感じさせたのが奥尻町国民健康保険病院です。今後、行政も巻き込みながら予防等を含む地域体制構築について敬意を表するものであり、離島など道内各地のへき地医療、地域社会維持のために医療関係者や多くの介護・福祉関係者、行政の皆さんに知っていただきたいと思います。
 こうした道内各地の取組の集大成と思われたのが、「地域包括ケアを実現する入退院支援プロセスについて〜医療機関を中核とした社会システムの構築〜」(医療法人社団 はらだ病院)です。

社会システムの構築に果たす医療機関の役割は治療だけに留まらない機能が必要とされている問題意識が伝わってきます。

 その中で「ソーシャルワーク入院」という考え方が示されたことは印象に残りました。医療機関の地域における役割は大きく変化し、ニーズに合わせた活動領域を医療サービスとして提供していく必要が指摘された事にとても重要性を感じます。

「地域に積極的に出ていく」「地域の駆け込み寺」「地域の医療に責任を持つ」という3つのテーマに絞り込み実践の問題と呼び掛けています。

 89日弊社主催セミナーでも、「ソーシャルワーカーなどが外回りできる体制整備を現実に」と訴えるべく準備してきたこともあり、共感を覚えます。
 

〇若手病院長達の人材育成・教育33c10acbc296646edc2773013b082a42-212x300

 「病院経営を考える時、人材育成と教育は欠かせない。特に事務部門に光を当てていく必要があるのではないか」と考えられた当時50代前後の若手病院長の皆様を中心に始まった北海道病院学会。その背景には「普段の自分たちの業務の取組と創意工夫を知ってほしい」という院内多職種の強い思いがあったことを改めて思い起こします。

最初の数回は参加者数十人での開催でした。土曜日の昼から夕方までの4時間前後の集まりでしたが、回を重ねる毎に医療専門職それぞれの演題発表の域を超えた組織横断的発表演題が増えていく「まぶしさ」を感じながら取材させていただいた事を思い出します。

今や土曜日の午前9時から演題発表が始まり、常時800人前後の参加を見るに至っています。広域の我が北海道にあっては、前泊された参加者が多いことは明らかです。そして準備にあたる北海道病院協会事務局の皆様、発足当初から病院事務長の皆様が受付や進行などの役割を担当されていたこと。それは今も変わらぬ自然な気風となっている事を何かの折に知っていただければと思います。

こうした足跡の中にまぎれもなく北海道におけるチーム医療、多職種協同の在り方が育まれてきたのだと実感します。それは「臨床現場のエネルギーの発露」の表現に他なりません。

地域包括ケアネットワークの「深化」「浸透」「精緻化」を保証する力がここにあり、多様な地域状況を抱え込む北海道にあってこそ必要とされる力ではないか。そのことを実感させる学会であったことを嬉しく思います。

株式会社メディウェル 顧問 古川 俊弘