国全体のテーマとして働き方改革の推進が叫ばれ既に数年の歳月が経過しています。中でも医師の超過勤務は待ったなしの対応が迫られています。勤務時間の負担軽減から改めて強調したいのが医師事務作業補助業務の果たす役割の大きさです。
残念ながら思いのほか同業務の導入と加算届け出医療機関が少ないことも事実です。
昨年の診療報酬改定で各施設基準について軒並み50点の引き上げが実行されたにも関わらずなぜなのか。
医療機関の側から真っ先に挙げられるのが人件費に見合う加算点数となっていないことです。
確かに加算点数そのもので人件費の帳尻が合えばありがたいことです。

ただしこの考え方には限界があると私は感じています。

チーム体制評価の時代
相乗効果の理解がなければ
導入すべき取り組みが後回しになりかねない

 2012(平成24)年度診療報酬改定の際立った特徴の一つは、処置等といった「個々の行為評価」から「チーム体制評価」への転換でした。

 一般病床における精神科リエゾン評価、病棟薬剤業務実施加算の新設などはその象徴です。71入院基本料評価の見直し、特定除外制度の見直しと廃止等の動向は入院実態との整合性を問う形で医療提供体制の再編を推進しようとしたものに他なりません。

 チーム体制評価から医療経営管理職に求められる事は、チーム体制から得られる相乗効果を経営に反映させる事であり、「個々の行為評価」と異なる判断が重要になってきたように感じます。
 医師事務作業補助業務に限って考えると、同業務実施によって期待される効果の理解が必要なのではないかと思います。

期待したい医師事務作業補助業務の役割理解

 医師事務作業補助業務によって実践される業務にはどのようなものがあるでしょうか。

 書類・診断書・入退院サマリーの作成、入院決定後の入院時指示、入院の説明・同意書の取得、診療録・手術記録の入力、さらには非侵襲的検査の検査の説明・同意書の取得などがあげられています。

医師から移管3

(参考:医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング/第2回2019年7月17日日本整形外科学会提出資料https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000528271.pdf)

診断書の作成代行から何が考えられるでしょうか。
最終的には医師のサインが必要だとしても記載業務から医師は解放されます。
例えば生命保険の診断書作成など1件当たり5,000円の書類作成料をいただくとして、仮にこの3割を医師事務作業補助者に案分したとすると、その「収益性」はどうでしょうか。
このようなケースからも「収益性」の見え方は随分変わってくるのではないでしょうか。
 当然、医師の負担軽減それ自体の効果は最優先されなければなりません。この場合、直接の負担軽減効果と共に医療機関の勤務環境への配慮という二次的効果も見逃せません。

 悔しいことに北海道は医師標欠に伴う痛い代償を払ってきました。
都市部のみならず地方の救急対応中核医療機関にあっては、医師確保とは医師業務負担軽減と一体のものといえます。
その意味で今期待されることは医師事務作業補助者導入医療機関の道内全域への普遍化です。

 そのための「障壁」があるとすればその解消対策を問わなければなりません。

地方事情考慮した「救急」評価提案を考えてはどうか

 周知のように医師事務作業補助加算は緊急入院患者数が要件化されており、急性期医療機関における医師業務負担軽減と経営支援の意味合いが強く、緊急入院対応を前提とした場合「地方」と「都市部」では緊急入院患者数の意味が違います。

例えば人口1万人未満の町で年間緊急入院患者数が50件を超える医療機関について、医師事務作業補助加算の対象とするなどの仕組みが考えられても良いのではないでしょうか。

 それは単純に集約化を適用できない広域性を有する本道だからこそ提案していくべきことではないかと私は思います。

 「その人材を確保できるのか?」

そういった声が聞こえてきそうです。

 その点について私は次の二つの点から確保が可能ではないかと考えています。
一つ目は「院内の現事務職員の中に人材を求める事が出来るのではないか」、もう一つは「地域内からの雇用が考えられるのではないか」ということです。

 札幌市内のある医療機関では、異業種から医師事務作業補助者になる方が多数を占めています。医師事務作業補助者は医事業務経験が前提となっていないので、医療界以外からの受入れが可能です。
ただ、その場合スキルアップのサポートが必要となる事は言うまでもありません。

記憶しておきたい
「電子カルテ時代だからこそ
外来、術場での臨床体験をさせたい」指摘

 医師事務作業補助者で私個人が大切にしている事は、道南地方の脳神経外科病院の事務部長をされていた方の指摘です。

 道内でもいち早く導入され、加算点数は現在の4分の1にも満たなかった時代の指摘です。
「電子カルテの時代、臨床場面を知らず入力の早さを追い求める傾向を懸念している」と漏らされた上で、「この時代だからこそ外来で医師の説明に患者や家族がどんな表情を浮かべるか知る機会を医事課勤務1年目から2年目に体験させてあげたい。同様に手術場等の臨床を直に見る事でその後のスキル形成に果たす役割は大きいのではないか」

 生きた人間関係の中で実践される医療ならではの人材育成、その視点からも医師事務作業補助体制加算がより広がることを祈念しています。

 だからなのでしょうか、日本医師事務作業補助研究会は「医師事務作業補助者」という表現に代わって「臨床支援士」という表現をされています。

 言い得て妙と共感しています。

 

株式会社メディウェル 顧問 古川 俊弘