第42回スキルアップ案内書
 退院に向けた機能へ転換が期待されている療養病棟入院基本料算定病棟(医療機関)を対象にリハビリテーション3職種をはじめ(管理)栄養士、歯科衛生士、介護福祉士、臨床心理士、MSWPSWなどの医療・介護職種で構成する「151配置体制に対する加算評価の新設」が期待されている。これは療養病床再編や介護医療院への転換など医療介護提供体制改革を進めるための役割・機能の明確化と促進支援のために必須要件ではないでしょうか。 

 第一に在宅(居宅)復帰機能が実際に進められている中で病棟における生活機能の再獲得支援が重要となりリハビリ職種などの配置を含む医療介護多職種協同のチーム医療体制整備が進んでいるためです。
 第二の理由は、「急性期医療機関の入院期間の短縮化」とそれに伴う「療養病棟における患者重症度の高まり」です。このことは看護職員配置20対1では現実問題として対応できておらず、療養系病院の一部では看護補助者を含め10対1に近い人員配置体制となっているケースも今では珍しくないためです。
 そして第三の理由は、退院や居宅復帰支援の機能を考えた場合、もはや看護職員配置体制評価に限定していて地域包括ケアネットワークは進まないと判断できるためです。地域包括ケアネットワークの琴線は、「一連の過程の繋がり」です。その点からみると、そうした機能を拡充していくことは、この間の改定に反するどころか促進を求めるものであることは明らかです。
この点については以前から日本慢性期医療協会が明らかにしていますので、それを参照いただければと思います。

 

疾患別リハビリテーションと組み合わせた全身状態改善体制整備が望まれている

 第一の理由に対して次のような異論が聞かれるかもしれません。
「疾患別リハビリテーション評価があるではないか」というものです。

 疾患別リハビリテーションの役割を積極的に評価するからこそ201単位ではない時間単位でのリハビリ機能が積極的に組み合わされる必要があるのではないでしょうか。病床からの離床と移乗支援はもとより車いすの調整やシーティング、短時間の排泄ケアなどにリハビリテーション職種が関わっている体制の意義は大きいと思うのです。
 それは看護職にとっての業務負担軽減と患者の自立度、生活機能の改善にもつながるのですが、残念ながら現状は医療機関の診療姿勢に依存した「持ち出し」による実践となっているのではないでしょうか。

 退院、居宅支援機能を重点にしている療養系病院は少なからず退院後のデイケアなどの機能も担っていることと思います。デイケアと結びつく前段での病棟リハビリテーション機能をはじめとする全身状態改善、自立支援機能が切断されていてはデイケアの役割は半減します。
栄養状態改善、口腔ケアに対する各種加算制度が整備されてきており、各種加算制度の活用を目指すべきという意見もあると思います。
 その通りなのですが、まずは施設基準上入りやすい人員配置基準で常勤体制などを促進し、その後加算評価されることで単一専門職の増員を期待できるのではないかと思うのです。
以前、私は夜勤勤務等看護加算を活用し入院基本料をランクアップしていくための財源根拠とした経営改善支援を行った経験があります。
 全身状態の改善と結びついて退院・居宅復帰の可能性を高める意味からは管理栄養士や歯科衛生士などが一体となってケアを進める体制整備が急がれることは明らかですし、厚生労働省も一連の病期過程を繋いでいく機能と役割を強く期待していることは、特に2018年度改定でははっきりと示したのではないでしょうか。

 

地域包括ケアネットワークの深化、浸透、成長のためにも一連の病期過程の全身状態、生活状態改善の仕組みは不可欠

 表現を変えると「地域包括ケアネットワーク体制を深化、浸透、成長させていくためにも全身状態改善の一連を繋いでいく体制整備とその評価が必要ではないか」と療養系病院の方々との意見交換を通じその思いを強くしています。
 そのためにも私は療養系病院での排泄自立支援・ケアに対する取組がさらに広がることを同時に期待したいと思います。その際、家族参加型の対応が組み合わされていくと、その意味は一段と生きてくるのではないかと思います。
 療養系病院などからしばしば伺うことは、「患者が退院し自宅に戻ることへの不安」です。とりわけ排泄ケアへの不安が大きいことは疑う余地がないようです。その壁を克服するためにも、入院段階でどのような介助をすると自力排泄が可能となるのか、自力排泄への過程は患者自身の生活意欲向上を含めもたらす効果が大きいことを道内の地方赤十字病院看護部長から教えていただきました。そこでは地方という状況もあり、病棟配置の介護福祉士から院内デイケアの取組が実践されていることを我がことのように喜んでいる看護部長の姿がありました。患者の変化を目の当たりにすることで家族の意識も「退院させないでほしい」というものから「自分たちも(訪問看護などの支援を得る事で)生活していけそうだ。そのためには何が出来ると良いか」というものに変貌していくというのです。
 こうした臨床現場の確信を少しでも助長できるように制度整備を促進することが地域包括ケアネットワーク構築と深化、浸透、成長させていくために私は必要だと感じています。
 そのために療養病棟入院基本料1算定病棟を対象とする「15対1医療職配置加算」の新設を望みたいと思います。
 医療機関、特に病院経営を取り巻く経営環境が厳しさを増す中で、本来は各病棟類型の入院基本料引き上げが前提として強く望まれるところです。残念ながら適切な診療報酬のプラス改定を望むことが難しいと考えられる現在では、病棟類型の機能に対する加算評価を促すことが政策妥当性を持っていると思い上記の提唱と致しました。
※筆者は10年以上前に「日本慢性期医療協会は151看護職配置加算創設を提唱せよ」といった趣旨の提案を本メディウェルログで行っています。本稿はその最新版といえるものです。以前との違いは「退院等を視野に置く必要が以前以上に強く期待されていること」、そのために「リハビリテーション専門職をはじめとする病棟での多職種連携・チーム医療体制整備が療養病棟で進んでいること」の積極的評価を訴えたいと考えていることです。医療職の中にはMSWPSW、臨床心理士、介護福祉士を含んでいると考えていただければ幸いです。

2019920日記

株式会社メディウェル顧問 古川 俊弘