1115日中医協総会(433)が開催された。「入院医療(その1)について」などを議題とした当日の議論が示したものは急性期入院基本料1(71入院基本料)算定病床を減床したい強い政策意思です。

 そのことを象徴したのが「重症度、医療・看護必要度」と該当患者比率をめぐる支払側、診療側の議論の応酬です。

11月15日中医協3


 既に入院医療等の調査・評価分科会でも診療実態のとらえ方で激しい議論が交わされていた「B項目のうち【B14(診療・療養上の指示が通じる)】又は【B15(危険行動)】に該当する患者であって、A得点が1点以上かつB得点が3点以上(基準)」の取り扱いを中心とした指標としての見直しと急性期治療の対象としての適切性をめぐる激しい議論のサヤ当てが繰り広げられました。
・昨年(2018年)度改定で新設された基準△4割前後を占めること。
・基準△搬召隆霆爐箸僚妬はほとんどないこと。
・基準△里澆乏催する日があった患者について直前の状況をみると「いずれも非該当」の患者が多く半数を占めること。
・基準△里澆乏催する患者は他の基準と比較して認知症やせん妄を有する割合が高いこと。
・「医学的な理由のため、どちらかというと入院のほうが望ましい」の割合が低いなど
支払側委員から「急性期対応というより療養病棟でみるべき患者ではないのか」と声が上がった。

  この背景にあるのは、言うまでもなく旧7対1算定病棟の93.5%(本年6月1日時点)が占めており一向に7対1病棟が減少していない数字上の事実である。

 

 

「療養病床でよいではないか」支払側委員の発言が示した認識の誤りは何か

 
 「急性期病床ではなく療養病床で対応すべき患者ではないか」という支払側委員の発言について、まず問われなければならないのは基準△砲里潦催する患者のケアを含む診療の実際が的確に示される内容になっているのかという問題が残されている。
 それにも関わらず、この点について踏み込んだ診療内容を示し明らかにしていこうとするよりも認知症、せん妄の患者が多いという狭められた議論に終始する傾向があることは診療側も含めてどのようなものかと思う。
 そして支払側委員に特に理解して欲しい事は、高齢化の進行などを背景に認知症やせん妄症状も呈する患者が多くなるという事実が「それしかない病状の患者」にすり替わっているような議論に強い違和感を覚えざるを得ない。
それは中医協の正しい議論のあり方なのだろうか。

 

 

高齢化進行は認知症抱える急性期対応の負担増をどう支えるかこそを共通課題としているのではないか

 

 高齢化の進行は認知症を抱える急性期対応が必要とされる患者の増加を意味しており「看護業務の増加」は当たり前に生じる問題であり、それは看護に代表されるケアがほとんどというように同一視される性格のものではない。
 当日診療側委員からすかさず反論されたように「認知症有する患者等は急性期医療は必要ないというのか。暴論だ」という反発を誘発した。そして暴論の中身に踏み込んでいく議論ではなく言葉の意味合いの議論に流れるものとなった事は残念である。2018年度改定で新設された基準△蓮∋拱側、診療側、公益側皆の時代の変化に対応したものである。その事実の重みと大切さはどこにいったのであろうか。当然、増大する「急性期の負担増をどう支えるのか」こそを共通課題としてより発展的な評価項目としての議論こそが重要であろう。
 想起したい。
精神疾患を有する患者の身体合併症治療を否定するような「医療の放棄」と「人権の放棄」を誘発しかねない議論ほど中医協にふさわしくないのではないか。

 

 

療養病床の「退院志向型多機能臨床実践」に冷水浴びせ医療介護一体改革に逆行


 そして私が強く危惧するのは、こうした支払側委員の発言が「退院志向型多機能臨床実践」へと意識転換を進めている療養病床の実践に対して冷水を浴びせることにならないか、ということである。
 今、「状態の維持」を第一使命とした療養病床のあり方から積極的なリハビリテーションや口腔ケア、栄養管理など入退院調整と地域連携の推進をどう進めるのかーー本当に多くの療養病床・病院が苦心されている。
 残念ながら多くの家族等は長期入院、それも永遠の入院受入れを希望されているのが現状である。
しかし環境の変化によりそれが変化していくことに望みを託しつつ「時々入院、ほぼ在宅」を担う慢性期医療とは何かーーそのための排尿自立支援をはじめとするリハビリテーションや栄養管理、経口摂取などを通じた居宅支援など多機能型慢性期医療の積極的対応が模索されている。模索の過程は医療区分八割といった要件変更など制度の大きな転換点との絡み合いでもある。

 その切実さをくみ取っているのか。

 今回の支払側委員の発言は、そうした現実の進展に冷水を浴びせるものに他ならないのでないか。積極的な診療が期待されていることを源泉に活気が生まれている。

 そして支払側委員が期待する医療介護一体改革の推進に掉(さお)さすことになりかねないのだという事を理解いただきたいと切に思う。

 

 

注目したい介護医療院居宅復帰16「永遠入所」前提としない現場実践こそ認識を

 

 かつての「常識化されたイメージ」(特に日刊紙)で例えば慢性期医療、療養病棟像に固執し医療介護実践の変化と取組を認識されていない傾向に対する雄弁な異議申し立てとして1114日に行われた日本慢性期医療協会(武久洋三会長)で紹介された日本介護医療院協会(鈴木龍太会長)2019年度調査の一端を紹介したい。
※本調査の詳細な紹介は当日公表された「介護医療院の開設に関する調査」とともに他日を期したい。

 そこで明らかにされた数字で注目された一つは、直近3か月間の退所者総数について、
「自宅へ」8%、
自宅系老人施設(有料老人ホーム・特養等)へ」8%
つまり居宅退所率が16%に達している事実。「入院から入所に変化した永遠の入所」形態と受け取られそうな介護医療院で「可能な限り居宅退所を実現していこう」とする積極的医療介護姿勢が反映されている事こそ大切である。 それを保証する多機能性の具備にも視線を届けたい。こうした臨床現場の認識があって初めて実りある議論を期待できるのではないか。そのことを支払側委員に希望したい。 

 本稿の締めくくりに、次の中川俊男日本医師会副会長の中医協委員退任にあたってのあいさつの意味をかみしめたい。

 中川先生は次のように話しかけている。

 「1つは各側委員へのお願いです。日本の医療政策は、中医協をはじめ、厚生労働省の審議会で丁寧に合意形成のプロセスを踏んで策定されています。このことが、国民皆保険としての日本の公的医療保険制度の国際的な評価につながっているのだと思います。しかし最近では、直接の所管ではない政府の他の部門から、診療報酬の細部に踏み込んだ提案が常態化しています。(中略)このままでは日本の医療政策がその時々の権力構造におもねる形で決まっていきはしないか、そういう危うさを感じています。各側委員には一致して、中医協の丁寧で開かれた合意形成プロセスを守り通していただきたいと心から願っています。」

 

20191119

株式会社メディウェル顧問 古川 俊弘