病期問わず全身状態改善の診療体制移行促進へ。リハビリ・

栄養・摂食・入退院支援・相談機能評価し医療機関特定化

 

 2018年度診療報酬改定を踏襲し全ての病棟類型について入院基本料は据え置きとされる2020年度改定は「単純な」人員配置評価ではなく、実際に担っている機能の追認評価とそれによる医療提供体制改革が医療機関自らの判断で進むことを期待する内容となっている。そこで求めていることは病期を問わず全身状態改善の診療体制が継続して提供されているネットワーク評価であり、取りも直さず地域包括ケアネットワークの顕在化を目指すものである。

こうした機能転換に対応しない医療機関には算定点数増にならない仕組みが一段と徹底されている。精神療養病棟入院料での疾患別リハビリテーション料算定を認めるなどリハビリテーション・栄養管理・摂食嚥下・入退院支援・相談機能評価はその象徴である。

 これは同時に医療管理職や各専門職能に対して「個別項目の算定ができるかどうか」意識構造からの転換を最終的に期待するものである。

あらかじめ指摘すると、例えば多職種チームによる摂食嚥下リハビリテーションの評価では現行の経口摂取回復促進加算が185点から週1回に限り200点算定のチーム体制評価へと衣替えが期待されている。

 

 注目いただきたいのはチームを構成する各専門職種の明確化と共に「専任の常勤管理栄養士」といった専任、常勤規定が組み合わされている事実である。

 常勤であれば専任以外の業務担当を可能とするということを意味している。

 この点を理解した人員確保、勤務環境改善と診療機能の転換と収益増対策を一体的に検討いただきたい。

 専従規定からの緩和は各医療団体、支払側委員、公益委員、事務局担当厚生労働省の共同討論と理解の産物に他ならない。臨床現場がそれを積極的に行えなければ努力は水の泡に帰してしまうことになる。

 

精神療養病棟が疾患別リハビリ、

リハ総合計画評価料算定可能へ

 

 具体的に注目したいのは精神療養病棟入院料での算定可能類型の拡大である。

ここでは長期入院患者の高齢化及び身体合併症等の実態を踏まえ、疾患別リハビリテーション料及びリハビリテーション総合計画評価料を別に算定できるようにすることが答申の中に明示された。

 当然、精神療養の世界でのリハ提供は期待されることであり全身状態の維持・改善に向けた対応が求められることになる。

 さらに注目したいのは多職種で構成されるチーム対応評価があらゆる場面で前面化している事実である。

 

多職種チーム医療体制評価が摂食嚥下

リハビリ評価など目白押し

 

 現行の経口摂取回復促進加算12から摂食嚥下支援加算に名称・要件が見直される摂食嚥下機能の日常化を期待する改定は狭い意味での「治療」限定診療から全身状態改善と退院後の居宅復帰までを視野に入れた診療体制へのはっきりとした転換が要請、期待されている。

 そこでは単に多職種チーム体制を求めているのではなく「摂食嚥下支援により、内視鏡下嚥下機能検査又は嚥下造影の結果に基づいたリハビリテーション」計画書作成又は見直しが求められる。

 質の高さを担保したチーム体制評価であることを見逃すことはできない。

 

 極めて示唆に富むので答申の個別改定項目から関係部分を引用しておきたい。

第451回 総会 議事次第-001

第451回 総会 議事次第-002
第451回 総会 議事次第-003
第451回 総会 議事次第-004

 一連の居宅を見据えた病期対応の連携・機能分化、特に精神医療領域における「入院から外来への転換」を期待する象徴として注目していただきたいのが「精神科退院時共同指導料1、同2の新設である。

 同指導料1は外来又は在宅医療を担う保険医療機関が算定できるものであり、同2は入院医療提供する保険医療機関が算定できるものである。「つなぎあう」両者を評価する地域包括ケアネットワーク推進を絵にかいたような制度設計であることを大切にしたい。

 機能分化・連携という意味から「外来又は在宅医療を担う医療機関」は入院医療機関と別の医療機関であることが求められる。

 精神医療の世界についても病院は入院、診療所は主として外来という発想の表面化という見方もできるかもしれない。

 より関心を払っていただきたいのは算定要件として「当該保険医療機関の精神科の医師、保健師又は看護師及び精神科保健福祉士並びに必要に応じた薬剤師、作業療法士、公認心理士、在宅療養担当保険医療機関の保険医の指示を受けた訪問看護ステーションの看護師(准看護師を除く)若しくは作業療法士又は市町村若しくは都道府県の担当者等が共同指導を行った場合」に算定できることである。

行政機関までを取り込んだ一体的対応の中で地域包括ケアネットワークの具体化が期待されている点が重要である。

だからこそ多くの精神保健福祉士が地域の医療介護ネットワークとの関係構築がされていない実態の克服は急務であると断言しなくてはならない。

MSWの世界では当初から日常的に行政関係者との連絡、関係づくりが求められていたことと対照的である。

精神科医療機関を含め在宅ケア連絡会議などへの参加は急務であり、当たり前の行為とされる必要があることを強調しておきたい。

 

2020年2月10日

株式会社メディウェル顧問 古川 俊弘