なんとも罪つくりな妖怪が現れた。
「急性期入院加算」「急性期特定入院加算」廃止という動きだ。
 二つの加算は、「急性期医療の実施体制・地域医療との連携体制の指標」※として紹介率(30%以上)と平均在院日数(17日以内)、診療録管理体制などを要件とするものだ。そこに多くの医療人は「近未来の急性期病院像」を予見し、目標とした。
 全国各地の急性期医療の中核病院が、次々に紹介型病院への転換を目指し積極的な逆紹介などを進めてきたのは、そのためだ。
 「根こそぎ患者を奪っていく」存在と映っていた中核病院が自ら外来制限をしたり、連携医療機関の患者への案内などに力を入れてきた。その中で始めて地域医療の機能連携と分担が現実味を帯びてきた。同時に外来患者を次々に制限した結果、赤字経営寸前まで至った中核病院も生まれている。診療報酬評価が追いついていないためだ。
 そんな最中に、降って湧いたように両加算の廃止が提案された。
 これでは中核病院はたまったものではない。
 地域医療の混乱は避けられない。
 問題解決の方向が逆だ。
 なるほど「診療報酬に関係なく機能連携と分担はすべき」(8日中医協での麦谷厚生労働省保険局医療課長)に違いない。しかし、病院と診療所の役割の違いが明確にされないまま推移した経緯を無視することはできまい。 
 両加算廃止は、見送るべきである。
 ※『第6版 診療報酬(介護報酬) その仕組みと看護の評価』日本看護協会出版会173頁からの引用。両加算の詳細な要件は、同書または『医科点数表の解釈 16年4月版』社会保険研究所などを参考にしてください。