「高い病床稼働率」こそ危険だ!!

こう言うと驚かれるでしょうか。

 特に急性期病院では見過ごしやすい経営管理の落とし穴が「高い病床稼働率」です。

 民間中小病院の一般病床の病床稼働率が70%を切っているかもしれない現状です。

どうして高い病床稼働率を問題に出来るのか。

読者の皆さんから叱責を受けるかもしれません。

 

 しかし、ここに意外な落とし穴があるのです。

 例えば整形外科を考えてみます。

 周知のように整形外科は、術後2週間を越えると日当単価が低下します。

 手術件数の多い病院では、状態をみながら回復期リハビリテーション病棟への転院、転棟を行い早い社会復帰を目指します。

 同時に病床改定を早くすることで日当単価を結果的に高くすることにつながります。

 高い病床稼働率はそうした実績と結びついて初めて大きな意義を経営的に発揮します。

 手術件数が少なくあるいは減少してきた結果病床に空きが増えはじめた時に、しばしば出現するのが「高い病床稼働率」の誘惑。つまり不必要に入院期間を長くする傾向です。

 その結果、何が起きるでしょうか。

 病床稼働率が高いにも関わらず経営効率が低下する。

 進行すると平均在院日数を長くし入院基本料のランクダウンを呼び起こしかねません。

 

 日当単価の変化にこそ注目を

 

 先日関東圏のある中規模病院の事務部長さんと意見交換する機会を持ちました。

 そこで問題となったのが、「高い病床稼働率の危険性」です。

 その病院は回復期リハビリテーション病棟を持つ後方病院が系列下にあります。

 状態が安定した時点で実は後方病院に転院させると法人全体で考えると増収になります。

 このため、取られた手段が30日超患者の洗い出しと日当単価の変化と転院時との比較です。

 一件単価だけではなく日当単価の変化に注目していくと病院の急性期機能性あるいは急性期患者数の実態が浮かび上がるというのが私たちの確認事項です。

 

 一つ質問があがると思います。

 「それでは病床に空きができるだけではないか」。

 その通りです。

 核心は、幾つもの病棟が全て70%台という病棟実態にありました。

 病棟単位のダウンサイジングを実施すると、この病院は入院基本料の1ランクアップと高い病床稼働率が実現するだけでなく日当単価と1件単価も高いものに変化します。

さらに後方病院の病床稼働率も高くなることが期待できます。

それを押さえ込んでいるのが病床稼働率を高くすることで患者数の減少を覆い隠そうとする意識です。

内科系、外科系問わず危険な意識です。

案外、この点が病院経営では見過ごされています。

 

※具体的データを用いた検討は、メティウェル通信クラヴィス1120日号で行います。