●行政ウオッチ

2009年12月25日

 一部の病院関係者を慄然とさせ、衝撃が走った―。
 12月18日、都内で行われた中医協診療報酬基本問題小委員会。
 病院関係者を慄然とさせたのは、次の提案です。
 「一般病棟15対1入院基本料算定病棟に限り、試行的に90日超入院患者の全てを対象に医療療養病棟入院料を適用させてはどうか」。
 DPCなどとともに取り上げられた議題の一つ、「長期入院患者に係る診療報酬について」で飛び出したものです。

後期高齢者以外に減額対象拡大
 この日は論点として一般病棟の90日超の入院をしている患者についてどう考えるかがまず提起されました。
 現在は後期高齢者に限り90日超入院の場合の減額規定がありますが、年齢要件を取り払ってはどうかという提案です。
 また、特定除外という形で減額対象としていない規定の取り扱いと関連して、病態要件について「現行の特定除外項目を廃止し、療養病棟入院基本料で用いている医療区分採用項目、又はADL区分に試行的に置き換える」ことについて、どう考えるかが提案されています。
 周知のように特定除外項目に該当するケースについては90日超の入院であっても減額対象とはならない取り扱いがされています。
 つまり入院基本料と出来高を組み合わせた診療報酬の算定ができることを意味しています。
 「試行的に医療区分を適用する」とは、具体的に何を意味するでしょうか。
 ここが重要です。
 単純に医療区分などのスケールをあてるだけでは意味がありません。
 当然、ここに算定点数が直結してきます。
 このことは何を意味するのでしょうか。
 先に特定除外であれば[入院基本料プラス出来高点数の算定ができる]と記載しました。
 「試行的に医療区分」を適用すると、それがどう変わることを意味するのでしょうか。
 参考までに、点数表とポイントを次に示します。

              【医療療養病棟の点数表】
 医療区分1医療区分2医療区分3
ADL区分38851,3201,709
ADL区分2750
ADL区分11,198

【一般病棟の場合】
入院基本料 + 出来高診療
15対1の場合を例にとると
入院基本料 954点
日当単価は23,000円〜27,000円程度

仮に医療区分3の適用でも

6,000円〜1万円が

患者1人1日当たりの減収!


「試行的に次回改定までの

2年間」を待つまでもなく、

病院経営は直ちに不可能



 そればかりではありません。
 提案として、「試行的に一般病棟15対1算定病棟に限り」90日超の全ての入院患者について医療区分と診療報酬を適用してはどうかという案が出されました。
 一部の病院関係者を慄然とさせたのはこのためです。

 15対1病棟に未来はあるのか。
 13対1が同列扱いされない保障はあるのか。
 そのことが歴然と突きつけられたからです。
 その意味についてメディウェル通信クラヴィス最新号(315号)レビューで詳細に説明しました。
 一読いただければ幸いです。
 なお、結果として年齢要件は現行の減額対象75歳以上限定から事実上年齢限定要件を外す方向でほぼ合意されました。病態要件は、特定除外項目の廃止は見送りとされ、年齢要件の変更を別にすれば基本的に現行の枠組みを踏襲することで落着しています。この結果もあり、支払方式についても現行通りとする案で事実上合意されたことを付記しておきます。 


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2009年12月04日

 2日中医協が開催され、精神病棟入院基本料13対1創設の是非が議題に取り上げられました。
 今春時点で見送られた印象があったテーマですが、今回、論点として13対1がないことは「精神病棟の評価として妥当なのかどうか」という形で示されました。
 これに対して討論では「精神科で一番困っている問題が精神科以外の複合合併症を有する患者の対応。身体合併症などの患者対応は単科精神病院では困難として、他科を有する病院いわゆる総合病院における精神科で導入可能とする状況をつくってほしい」という要望が日本精神科病院協会などから寄せられていることが明らかにされています。
 これを受けて議論は身体合併症への対応が焦点となり、対応できる医療機関像として旧総合病院を意識するものへと進みました。
「何らかの要件をつけて認めてほしいという提案でしょうか」と遠藤久夫会長が確認したのは、このためです。
「例えば身体合併症などの条件設定」をつけてほしい考えが診療側委員から出されています。
 別の診療側委員からは「今、減少しているのは総合病院の精神科。自治体病院、大学病院でも精神病床は減少している」と精神医療を取り巻く経営環境の厳しさを指摘しつつ「是非、13対1を創設していただきたい」という賛同意見も出されました。
 支払い側委員からも「むしろ13対1を導入しなかった理由は何なのか(が分からない)」と疑問が示され、全体として精神病棟入院基本料に13対1を創設する方向で合意が事実上形成されました。
 
 この議論で良いのかどうか。
 私は疑問と考えています。

整合性欠いた対象限定型
入院基本料提案は筋違い
 理由は大きく二つあります。
 第一の理由は、精神病院全体に開かれた職員確保の支援を保障するものにつながらないためです。
 第二の理由は、入院基本料に診療機能要件をつけることは他の入院基本料と整合性を欠くことです。
 現実に13対1を可能とする単科精神病院も現れています。
 こうした単科精神病院にとって、身体合併症と旧総合病院という診療機能を要件設定されると、入院基本料のランクアップとは精神科急性期治療病棟の選択しかありえないことになります。
 アルコール症患者の比率などが大きい病院では15対1以上の人員配置政策を選択できないことを意味することになります。むしろ精神医療における「医療の質を上げていく」可能性にキャップをかけることになりかねないという意味で問題があります。
 制度設計から見てどうでしょうか。
 看護必要度・重症度と医師配置を要件とする一般病棟7対1入院基本料以外、診療機能を対にした制度設計を入院基本料は基本的に採用していません。
 仮に身体合併症対応と総合病院というように特定したいのであれば入院基本料ではなく「13対1看護職員配置と身体合併症対応、総合病院」を要件とする特定入院料を提案することが筋ではないでしょうか。
 今回のとおり制度設計されると、単科精神病院とりもなおさず民間精神病院は15対1入院基本料が上限という構造を逆に強くすることになりかねません。
 なお、旧総合病院、つまり官公立・公的病院では精神病棟の閉鎖や縮小がこの間、続いています。
 その流れに歯止めをかける効果を持つのかどうか。
 その点でも疑問です。
 以上から対象限定要件をつけるのではなくシンプルな13対1創設を希望したいのです。
 むしろ以前あった看護師構成比率による減算規定の復活とセットで提案することを中医協には期待したい。なぜなら13対1を届け出ようとする場合、多くの単科精神病院で高いハードルとなるのが、看護師構成比率7割要件であることが容易に想像されるためです。
 そうしてこそ精神科における「手厚い看護職員配置と医療の質の向上とその支援効果」を期待できると思います。



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2009年12月02日

 土日対応に代表される24時間365日のリハビリ提供が期待される時代の到来――。
 午前9時から午後5時勤務に併せた業務予定の作成感覚を超えたリハビリ対応が、専門職能性からも求められる時代が現実の取り組みとして眼前に広がっていることを示すものです。
 そのことを実感させる会議が18日行われました。
 会議名は、中医協診療報酬基本問題小委員会。
 「回復期リハビリテーション病棟について」と題した議題の中で、初めて土日対応しているリハビリ医療機関の調査とその評価が取り上げられました。
 二つ示された論点のうちの一つ、「患者の回復に必要なリハビリテーションが十分に提供される体制の担保」の評価をどう考えるかという形で問題は示されました。
 具体的には、土日のリハビリ職種の出勤状況と平日比較がデータとして提出されています。
 それによると平日と比較した土曜日の出勤者比率は72.7%。
 日曜日は36.6%です。
 小委では、『年末年始前に入院した患者の場合、大切な時期に数日間リハビリが空いてしまうことになり患者が不利益を被る』という形で問題は出されています。
 率直にいって稚拙な問題の提出ですが、リハビリはその性格から言って365日対応を当たり前とするものだということが焦点となった意味は決して小さくありません。
 そうした視点からみると、土曜日の職員配置が既に70%を越えている事実を注目すべきです。
 もはや決して例外的な対応ではない状況が臨床現場の現実となっています。
 まずこの事実をリハビリ職種、特にリハビリ管理職は念頭に置いておく必要があります。
 そして日曜日についても40%近い職員配置がされている事実。
 調査対象数の制約はあるといっても、こうした事実は平日の機能訓練室リハビリで済ませる時代は、もはや風前の灯だということを突きつけていると言えるのではないでしょうか。

生活行為に着目した
リハビリこそが期待されている
 同様に、24時間対応の視点を広げることが期待されています。
 朝夕の更衣や入浴時の状態など生活行為(リズム)に対応したリハビリの実践が期待されています。
 そうするとリハビリの世界こそ、午前9時から午後5時を前提とした勤務形態では対応しきれない領域が多く残されているという意識が大きくて当たり前です。
 また、遅出、早出などのズレ勤に代表される「シフト編成の能力が専門性実現のためにこそ必要とされていく」という問題意識が職能団体にあっても良いのではないでしょうか。
 こうした生活行為への視点があって初めて状態変化をすばやくキャッチし、短期間集中リハビリなどが有効に打てるのであって、その逆ではありません。
 この問いかけに、「そのとおり」と快哉をあげるのか、「勤務時間帯を変えても良いかスタッフに聞いてみなくてはならない」と反応するのかどうか。
 ここでリハビリ職能の未来を考えた場合、大きな隔たりが生まれるのではないか。
 そんな思いを強くしています。
 また、病院経営管理職についても、以上のような視点からリハビリの採算性ということを考える視点を持ってほしいと痛感します。
 しばしば1日あたり算定単位数の上下だけから“単位数引き上げ”を天下り式に“強要”する病院経営者を見かけることがあります。
 これは間違いです。
 リハビリ職種として当たり前に関わらなければならない場面に対応していくと、自然と算定単位数がついてくる。そうした評価の時代に既に入っていること。それに合致した動きが出来ていないのではないかという形で専門職としての意識性にこそ働きかけ、行動の見直しを促していく、そうした経営マネジメントを期待したいのです。
 ややもすると改定率の行方などに全てが集約されがちな中医協ですが、こうした視点からも意見のやり取りを見てほしいものです。



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2009年11月26日

 メディウェルログ読者から障害者施設等入院基本料に関しての質問を多くいただきます。例えば「一度は廃止が提案された特殊疾患病棟入院料のように同基本料について廃止の方向が出されたのかどうか」や「前回認められた経過措置は認められるのか」などです。

障害者入院料の廃止はない
 11月13日開かれた中医協では、障害者施設等入院基本料廃止ということは話題になっていません。反対に「今後更にNICUを経て患者の受け皿となるなど、その期待される役割」をはっきり謳っています。
 議題は、廃止の方向ではなく、前回改定で実施した目的外入院患者が長期療養にふさわしい病床に転院することの支援を目的に設けた経過措置をどう考えるかです。
 つまり経過措置を延長すべきかどうか。それが直接のテーマなのです。
 このことを意訳すると次の二つのように大きく考えるべきだと編集部は受け止めています。

経過措置を議題としたポイント
 第一に「病棟目的にふさわしい」という形で対象外を問題とするメッセージを送っているということです。
 その形を通じ3年後の診療報酬、介護報酬改定時に「社会的入院」と維持期リハビリテーションの介護保険集約などとあわせた医療介護提供体制の仕切りなおしを準備する。非該当3割規定が見直され非該当は特別入院基本料扱いあるいは2割程度に引き下げられるのかどうかの問題を提起するということです。
 第二に対象外患者「外だし」メカニズム作用の保証です。第一のポイントが「うまく」伝わっていないため、「外だし」メカニズムが作用していないので経過措置を延長し3年後の本番に備えたいというものです。
 なお前回診療報酬改定で行われた対応は何か。そのことを押さえておきます。
 対象患者については、重度の肢体不自由児、脊髄損傷等の重度障害者からいずれも脳卒中の後遺症患者(ただし重度の意識障害は除く)と認知症患者が対象から除かれました。
 では対象外とされた患者の取り扱いをどうするのか。前回改定では、経過措置として次の取り扱いが経過措置として出されました。

【前回改定で出された経過措置】
条件:平成20年3月31日時点で障害者施設等入院基本料算定病院に入院する患者を療養病床に移行している又は移行する場合です。
経過措置:平成22年3月31日までに限り医療区分1に該当する患者は医療区分2で算定、医療区分2に該当する患者は医療区分3で算定するもので激変緩和措置です。

 さて、当日の議論では、前回改定時に7対1類型を創設した最大の目的がNICU後の受け皿を期待したこともあって、非該当患者比率の見直しは直接言及されていません。
 直接には、不足しているNICU対策と小児医療のテコ入れが前面に出ているため経過措置の延長容認という方向で議論は推移したことを付け加えます。

 なお障害者施設等入院基本料算定病棟を有する病院が検討すべき経営戦略については、メディウェル通信クラヴィス313号に掲載してあります。
 お問合せはクラヴィス編集部・関原まで宜しくお願いします。
 TEL.011-640-3311



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2009年11月19日

 医療費と医師数養成の大幅増を掲げ医療界の期待を集めて民主党政権が誕生して2ヶ月。
 ここにきて長妻昭厚生労働大臣が「出来る限りネットでの上昇幅抑制」発言をするなど雲行きがおかしくなってきている。
 目に見える形で雲行きが変化したのは、事業仕分け会議がきっかけ。
 削減を目的とする会議だから、「刈り込み」が先行することになるのは否めない。
 かくてOECD並みの医療費水準への引き上げを高らかに謳いあげた選挙公約は、姿を消した。
 代わって台頭してきたのは、病院・診療所間の医療費配分の見直しや、診療科間の格差是正、薬価の大幅引き下げなど。
 仕分け人の中には、一度は歴史の表舞台から消えた「薬価参照方式」を持ち出す者まで登場した。
 この10年来の財務省の主張が全面的に登場している。

 医療崩壊の大きな要因として医療費削減を指摘したのは、民主党にとって年来の主張を、実は基本転換させたことを意味している。
 それどころかOECD並みの医療費水準への大幅引き上げを謳ったため、少なくとも医療界は好感を持って迎え、民主党政権下での医療再生を強く期待した。
 その際、マニフェスト通りの高い改定率になるかどうかは別に、少なくとも相応のプラス改定となることを誰も疑いはしなかったのは、ほぼ間違いあるまい。
 この点について財源確保を切り口に冷静な分析と見方をしていたのは、4年後の総選挙勝利を経て本格化することになると観測していた二木立日本福祉大学副学長など一部である。
 なお二木副学長は、民主党の医療政策が今後再転換する可能性にさえ早々と言及していた。
 それにしても、こうまであっさりOECD水準論を引き下げるとは誰も思わなかっただろう。

政権交代後はっきりした医療政策方針
示さなかったすき間突かれる?
 皮肉ではなく公約通りに物事が進まない、矛盾が現れたとしてもおそらく誰も民主党を責める考えは持ち合わせなかったと思われる。
 ただし基本原理を貫こうとする一線は堅持すると考えていた。
 医療界を落胆させているのは一転して低率改定の可能性が高まってきただけにあるのではない。
 基本原理そのものが揺らいだところで医療再生の期待を託すことができるのか。
 このことによる落胆は決して小さくないのではないか。
 政権交代後はっきりした医療政策方針を示さなかった、あるいは基本指針が未確定なすき間を突かれたのが転換劇の要因でもあろう。

財政優先政策による医療崩壊から
医療再生へ転換すること
 改めて主張したい。
 今、必要なのは財政優先政策の結果により発生した医療崩壊にストップをかけるだけでなく医療再生への転換である〔11月14日配信MRIC by 医療ガバナンス学会臨時vol.338号掲載 評論家/下財務官僚の村上正泰氏の論考から)。
 それは可能な限りの高率改定であり、その逆ではない。

 (注) 『現代思想』10月号に掲載された二木立日本福祉大学副学長の民主党の医療政策についての論考を併読いただければ幸いです。



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2009年10月30日

 1ヶ月ぶりの中医協が今日(30日)開催されました。
 この間、話題となったのは中医協議論ではなく委員選任問題でした。
 医療界の期待とは異なる話題のズレは、とうとう日本医師会に籍を置く3人の委員が選任されない、つまり日医外しという形で幕引きとなりました。
 日医の政治力低下や同様の観測記事が紙面をにぎわし、かえって今必要とされる医療政策は何かの問題は脇にいってしまった観があります。
 この結果、新任の委員は民主党医療政策の支持者あるいは理解者であるかのようなイメージをもって登場することにもなったのではないでしょうか。
 これは新任の先生方にとっても不幸なことです。

医系技官、日医といったシンボルに
全ての問題の根源説明手法は危険
 さて気にかかるのは、次の傾向です。
 医系技官あるいは日医という形で極めて特定したシンボルに、すべての問題の根源があるかのように説明していく論法です。
 その結果、この間、政治力の衰退を、むしろマスコミからも揶揄されてきた日医は医療崩壊の全ての責任者に「祭り上げられ」、医系技官は少なくとも医療にまつわる全ての厚生労働行政の膿を垂れ流してきた根源であるかのようになっています。
 何よりも、ここまで問題を狭く提示する結果、[諸悪の根源として一身に体現させられた存在の排除と、それに代わって、気持ちの同じもの同士につくりかえると全て解決につながる]という政治感覚が勢いを増します。
 私たちは、ごく最近、「お友達内閣」の弊害を知る政治体験を全国民的にしたはずです。
 また、こうした政治手法は、小泉政権のよくしたところではなかったでしょうか。
 政治の象徴化は、政策の成熟さを必ずしも意味しません。
 その意味で今回の日医外しという選択は、褒められたものではありません。
 政策転換のサプライズを与えるということで合理化できる代物でもありません。
 「形を変えた小泉路線」というのもうがちすぎではないかもしれません。
 何故なら、民主党医療政策の現在主流となっている人たちの中には、混合診療解禁などの提唱者も少なくないからです。
 医療政策について、この間、表舞台から退いた新自由主義施策が民主党政権下で実現するという思いがけないこともあるかもしれません。
 われわれが期待するのは、シームレスな診療の流れを適切に支え保障していくことであり、そうした方向性が見えるような政策の方向性と議論です。
 政争の場を期待しているわけではありません。



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2009年10月01日

 中医協診療報酬基本問題小委員会(委員長・遠藤久雄学習院大学教授)が9月30日都内で開かれた。
 この日の議題は、周産期・救急等について。
 次回診療報酬改定に向けた具体的項目がやっと議題として取り上げられた第一回目の「歴史的日」となった。
 とはいえ「主要改定検討項目案」が示されたわけではなく、次回小委員会の開催日時も未定。
 先行きの日程の見通しも定かではない中での議論のスタートとなった。
 周産期医療体制の確保の論点として事務局がたたき台として用意したのは5項目。
 増加するハイリスク児に対応するため、さらに整備が必要とされたNICU評価、産科合併症以外の合併症(基礎疾患を指している:筆者注)を有する妊婦受け入れなどをどう考えるかが示された。特にNICUの退室患者が円滑に移行できるような体制評価についての論点には支払い側委員からも賛意を示す意見が出されるなど現状の問題点に対する理解が進んだことを証明する議論のやりとりも。
 救急では円滑な救急医療体制を構築するための救急医療機関への支援として、3つの論点が出された。
 地域の搬送・受入ルールにしたがって救急搬送を積極的に受け入れる医療機関の評価、「出口の問題」を解消するため、医療機関の役割に応じた患者紹介等の評価、救急搬送受け入れ実績等に応じた評価がそれだ。
 周産期・救急それぞれに共通する課題として急性期の後方病室、後方支援機能への流れと体制づくりがはっきりと打ち出されたことは注目して良いところだ。
 論点については、基本的に了承することで全体の合意がみられた。

医療部会・医療保険部会の議論の進展への
不満背景に中医協のあり方に言及
 具体的議論がようやく始まったこともあってか、今回の小委員会の特徴は、中医協のあり方、役割に対する不満や閉塞感が各委員から出されたことだ。
 「診療報酬だけでは解決できない問題も多い。医療部会、医療保険部会の両部会が医療提供体制などについて問題点をはっきりさせて、診療報酬点数で対応できる視点から中医協は議論せよという提示をされるのが筋ではないのか。しかし両部会ともに(きちんと)機能していないのではないか」(西澤寛俊委員)という指摘は、その代表。支払い側の小島茂委員からも「前回改定でNICUはそれなりに評価した。(しかし)現実は厳しいデータが示されている。診療報酬だけでは改善に限界があることを示している。両部会で基本方針を議論する必要がある」と同調する意見が出されている。
 これは中医協の役割の見直しがされたことと相まって重要な指摘だ。
 こうした地についた議論が具体的現実を見据えた中で進むことこそ期待されている。
 そうした小委員会の問題意識も反映してか、事務局を代表して論点などの説明にあたった佐藤敏信厚生労働省保険局医療課長の説明も、制度とその運営、補助金そして診療報酬で対応できるもの、それぞれ役割があるという問題意識にたった説明となっている。
 周産期、救急ともに佐藤課長は、主な施策を制度上の措置、予算上の措置(つまり補助金)、診療報酬上の措置というように整理、それぞれの対応する施策と役割は異なることを留意した資料を用意、説明している。
 これが当日の小委員会の議論の大きな特徴だ。
 一部マスコミで提案された「中医協委員の差し替え」を政権交代の御旗の下で振り回す議論よりも、一見、迂遠に見えるこうした議論の進展に期待したい。
 点数の上げ下げや付け替えといった議論に終始するだけでは何も事態の改善が進まないことに対する共通の問題意識が形成されたと判断されるためだ。

異例の委員長提案でヒアリング実施へ
 また、この日の小委員会では遠藤委員長から予定にない「異例」の委員長提案がされた。
 周産期と救急に絞り関係者からヒアリングを行いたいというのが提案の趣旨だ。
 秋田県、北海道網走市などを訪問、他に振り替えようのない地域医療環境の中で「最後の砦」として機能している臨床現場の声を紹介し、数字上は低い照会件数で患者受け入れをしている地域実態の大変さと理解を訴えた竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)らの発言に刺激されたものであることは間違いない。
 委員長提案は一号側、二号側、公益委員のいずれからも了承され、人選など委員長一任として実施することで合意をみた。
 中医協とは何か。
 そのあり方と果たすべき役割という問題意識を一方で掲げつつ、極く限られた時間という制約の中で次回改定に向けどれだけ掘り下げた議論が進むのか。
 医療提供体制の将来といった視野をも期待される中での具体的議論の第一歩が始まった。

 なお当日の小委員会の詳報は、メディウェル通信クラヴィス10月10日号に掲載します。



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2009年09月25日

 「今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会」が17日、都内で開かれ、「精神保健医療福祉の更なる改革に向けて」(報告書)をまとめました。
 同検討会は、「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念を打ち出すとともに、約7万人の入院患者削減を打ち出し話題を呼んだ2004年9月策定の「精神保健医療福祉の改革ビジョン」が中間点となる5年間が経過したことを受けて、その検証と後期5年間の取り組みをはっきりさせることを目的に発足したものです。
 昨年4月以来、異例ともいえる24回の話し合いを重ねた結果がまとめられています。
 報告書は、改革ビジョンの基本理念を引き継ぎ、後期5年間の重点施策群について、次の4点を柱とした施策を講ずるべきと提案しています。
 柱とすべき4つとは、

1 精神保健医療体系の再構築
2 精神医療の質の向上
3 地域生活支援体制の強化
4 普及啓発の重点的実施 。

 具体的には、人員の充実を促すこと等を通じた精神保健医療の水準の向上、精神医療提供体制の入院医療中心から地域で支える体制への再編の必要などを強調しています。
 そのために医療機関等が訪問診療、訪問看護等の機能を充実促進していくための方策の検討、病期や疾患等に応じた医療機能のあり方を明示したうえで、将来的な病床の機能分化や地域における精神医療提供体制の姿を提示するとしている点が注目されるところです。
 ここで注目すべきは、病期と疾患という二つの方向から精神医療提供体制のあり方を考えていることです。
 病期(急性期、回復期、療養期)と疾患の特性に対応した機能分化と、メリハリをつけた医療提供と支援体制の整備という考えが強く示唆されています。

統合失調症、認知症、身体合併症を
特に入院医療の重点的対応領域に
 こうした視点から入院医療について、統合失調症、認知症と高齢化の進行等に伴いニーズが高まっている身体合併症を、特に重点的に対応すべき領域と位置づけ「入院医療の再編・重点化を進める」考えを報告書は打ち出しています。
 その際、疾患に応じた将来的な入院患者数の目標の設定等を行い、病床の必要数を明確化することを提案しています。
 具体的には、改革ビジョンが打ち出した約7万床相当の病床削減の目標値を引き続き掲げるとした上で、次の考えを示しました。
 統合失調症については入院期間の短期化が進んでいることを背景に、入院患者数を約15万人(平成17年患者調査時点19.6万人)とすること、認知症に関する目標値について平成23年度までに具体化することを明記しています。
 入院患者数の目標値の設定と関連して、精神病床・介護保険施設等の入院・入所機能のあり方や、介護保険施設等の生活の場の確保、介護保険サービスの機能の充実を含めた認知症に係る体制の全体像について検討を行うことを提案しています。
 入院患者の退院後の受け皿の整備抜きには、病床数削減を図ることには無理があるためです。
 精神医療についても医療保険と介護保険の組み合わせによる対応を図る考えをはっきりと示していることは注目すべき点です。

重症度に応じた評価の導入検討を提案
 今後の入院医療の診療報酬上の評価という視点から注目されるのは、「重症度に応じた評価を行う体系の導入について検討すべき」と明記したことです。
 即断はできませんが、精神医療領域でも進んでいるケースミックス評価の研究を受けた診療報酬評価の新たな方向性を示唆するものといえます。
 新たな方向性を示唆する内容に富んだ報告書ですが、問題も残ります。
 地域の受け入れ体制整備を強調しているものの、具体的な地域の受け皿体制、特に既に症状が寛解している長期入院患者群の地域受け皿整備についての具体的言及は乏しいことなどがそれです。
 とりわけ病棟をどう地域生活施設群等へ転換支援していくのか、そこに踏み込めない以上、実際の精神病床削減が進むかどうか疑問の残るところといっては酷でしょうか。
 入院医療にしても、人員基準一般の充実に留まっており、現状の経過措置の見直しを提起しているものの、医療法あるいは診療報酬上の手厚い人員配置基準の設定と評価までに踏み込むものとはなっていないのは心残りです。



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2009年08月24日

 8月22日と23日の2日間にわたって地域医療研究会全国大会2009(夏川周介大会長・佐久総合病院院長)が長野市で行われました。その冒頭の記念講演を金子勝慶応義塾大学経済学部教授が行いました。
 金子教授は、構造改革の失敗により年収200万円以下層の人数が1000万人を超えたことなどから、国民健康保険滞納世帯数が480万世帯で10年前の約1.6倍になっていることで医療保険自体が崩壊の危機に瀕していると指摘しています。また医療の質から医療制度が考えられなければならないのに、平均在院日数の短縮が上位の入院基本料算定につながるなど“悪しき”インセンティブの問題だと批判しています。また都市部での研修医の偏在など医師充足の問題点などを列挙しました。当然これらは地域医療に関連することとは言え、地域医療に限局されないマクロ的議論が展開されました。
 つまり地域医療問題の解決は、マクロ的な視点なくしては考えられないということではないでしょうか。今研究会では行政官や研究者による、地域医療というよりは医療保険制度全般に関連する講演やシンポジウムが目立ちました。
 例えば『これからの医療保障制度はどうなるのか?』と題して分科会も行われましたが、その中でもコーディネーターの松本文六地域医療研究会代表世話人(社会医療法人財団天心堂理事長)は、「本来入院基本料などはホスピタルフィーを中心に考えなければならないのに、看護師数の数によって決定されているというものになっている」と指摘し、また「『入院時医学管理加算』を算定している病院は、全国約8800病院のうち、140施設(2009年7月現在)しかない。例えば全身麻酔症例数年800件以上であることなどあまりにも大病院でしか算定できない条件を設定しているため」と診療報酬の問題点を列記し、次回診療報酬改定での改善を求めています。
 シンポジストの高橋泰国際医療福祉大学医療福祉医療経営管理学科学科長・教授は、診療報酬全体の流れとして「医療制度はマクロに見れば、『病床削減と機能分化』の方向に向かって流れており、その目的地は、急性期病床の密度を上げ、しっかりとした体制で急性期医療が実施できる体制の確立と、連携・往診を中心とした地域医療を守る体制を築くことになるだろう」とこの点を見逃してはならないと強調しました。

堤大阪大学教授
ファイナンスとサービス

 同分科会のシンポジストの1人、堤修三大阪大学大学院人間科学研究科教授は、「医療費のファイナンスを公的に行う一方で、医療サービスの提供・利用を自由に委ねることは可能か、イギリスはNHS( National Health Service:国営医療制度)創設と同時に、篤志病院を公営化している。ドイツ・フランスなども公的医療保険の下で入院医療は公的病院中心。ドイツにおける保険医の地域別・診療科別開業規制・過剰過少地域における報酬の増減がある。しかし日本は国民皆保険(強制加入)でありながら、医療機関の自由開業制・標榜科の自由選択制、患者の医療機関選択の自由を基本的に保障。私的病院のウエイトも大きい」と指摘しています。
 そのため医療費のファイナンスの仕組みをどう維持していくかと同時に、医療サービスの内容に関する問題にどう対応していくかが重要だとしています。※堤教授は実際に医療とファイナンスとサービスに関しての具体的なモデルケースを提示していますが、ここでは割愛します(メディウェル通信クラヴィス308号で掲載予定)。
 また後期高齢者医療制度に関しても、昨今のヒステリックな批判ではなく、制度のそのものの不備を指摘しています。「後期高齢者医療は、実額表示の保険料・基礎年金からの天引きなどによる保険料引き上げの困難、後期高齢者支援金(74歳以下の保険料)の増額への抵抗、公費負担に対する財政制約により、給付抑制圧力の大きい制度構造。長期的な診療報酬抑制のおそれが強い」と指摘しています。後期高齢者医療は、リスクの高い者(例えば暴走族だけを集めてバイク保険をつくるようなもの)を保険集団として集めている、さらに世帯単位の二元体系に個人単位の一元化された制度を乗せる無理のある制度設計だということです。
 ざっと今回の地域医療研究会全国大会2009の傾向を粗々に辿ってきましたが、地域医療に関する研究会に関する有益な発表がある一方、次回改定や医療制度全般に関わるマクロ的議論が活発に行われました。おそらく今回の衆議院選挙による政権交代が現実味を帯びるなか、医療制度の劇的な変革が行われる期待が反映されたのではないでしょうか。その象徴的な出来事として、今研究会では様々な場面で民主党のマニフェストが引用されていたにもかかわらず、自民党のマニフェストの引用がほとんど見受けられなかったことが挙げられます。政権交代の可能性の高まりが研究会にも影響を与えているのかもしれません。

【コンサルティング事業部 関原】



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2009年08月20日

 各地で『介護職員処遇改善交付金事業者説明会』が開催されています。介護職員処遇改善交付金に関して、介護職員に一律に15,000円が支給されるとの報道がされていました。しかしこれは誤りでサービスごとの交付率を算出する際の指数が一人歩きしたようです。交付率の算定方法は下記の通りで、確かに15,000円の数字が踊っています。しかし実際の交付金の算出方法は『介護報酬総額×サービス毎に定める交付率』となります。

当該サービスの交付率=
[当該サービスの介護職員数(常勤換算)(全国計)×15,000円×12ヶ月]÷当該サービスの総費用額(全国計)

事業所・サービスによって
交付金額は様々
 かなり単純化しますが具体的に例を示して算出してみましょう。例えば訪問介護サービスを行っていた場合に、その1月の介護報酬総額が400万円で、それに関わる介護スタッフが4名とします。すると交付金は、400万円(介護報酬総額)×4.0%(サービス毎に定める交付率)となり、16万円の交付金を受けることができます。単純計算ですが介護スタッフ1名当たりの交付金額は4名で割ることになり、4万円となります。もし交付金のすべてを給与に反映させるのであれば、1名当たり4万円の給与アップになる計算です。
 繰り返しになりますが、当然交付率は各サービスによって異なりますし、また介護報酬総額に比較して介護スタッフが相対的に多い少ないと様々でしょう。そのためそれぞれの事業所により1名当たりの交付金のバラつきがあることになります。

【サービス別交付率】
(介護予防)訪問介護・夜間対応型訪問介護

4,0%

(介護予防)訪問入浴介護

1.8%

(介護予防)通所介護

1.9%

(介護予防)通所リハビリテーション

1.7%

(介護予防)特定施設入居者生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護

3.0%

(介護予防)認知症対応型通所介護

2.9%

(介護予防)小規模多機能型居宅介護

4,2%

(介護予防)認知症対応型共同生活介護

3.9%

介護福祉施設サービス・(介護予防)短期入所生活介護・地域密着型介護老人福祉施設

2.5%

介護保健施設サービス・(介護予防)短期入所療養介護(老健)

1.5%

介護療養施設サービス・(介護予防)短期入所療養介護(病院等)

1.1%

【助成対象外】
 (介護予防)訪問看護・居宅介護支援・(介護予防)福祉用具貸与・介護予防支援・(介護予防)訪問リハビリテーション・(介護予防)居宅療養管理指導

0%

【コンサルティング事業部 関原】



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