「機能分化・強化と連携」を進めるには何が必要なのでしょうか。天下り式に数量規制し、無理やり診療機能を単一化させるのが妥当なのかどうか。
 これに対して私は高次急性期病院と診療所・一般病院の間を「橋渡し」する機能を担当する病院こそが必要なのだという思いを強くしています。「橋渡し機能」を担当する病院とはどのようなものでしょうか。
 一次救急から部分的に二次救急を担当し、在宅へとつながるリハビリテーション機能を有していて、MSWをはじめ看護職などで構成される地域連携室が医療介護の連携先との間を不断に行き来、情報の共有と「顔の見える関係」を深めていく役回りを担当する。そして必要に応じて高次急性期へ適切に患者をコンサルテーションしていく役回りを担当する。その逆の流れを含め、そのような地域内の「橋渡し」機能を担当する病院の存在が必要であり、着実にそうした動きが広がっていると感じています。

 私が主たる活動の地としている北海道でも幾つか注目すべき取り組みがあります。
 例えば札幌市にある西岡病院が中心に前年度から進めている、札幌市豊平区西岡・福住地区在宅医療連携拠点事業推進協議会「とよひら・りんく」の取り組みです。
 同地区で在宅医療に取り組んでいる四つの診療所と西岡病院、訪問看護ステーションなどが連携の輪を広げています。
 この連携関係の中で前年度入院受け入れをしたのは28件。
 注目してほしいのは、深夜や未明の受け入れは1件もない事実です。
 どうしてでしょうか。
 在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院は24時間対応、深夜であれ何であれ緊急時の往診を求められているのではなかったか、と思われる方がいるかもしれません。
 私はここが大切なところなのではないかと思っています。
 患者・家族の状態の変化を介護業務での体の触れあいから感じ取るヘルパーさん、もちろん訪問看護ステーション、あるいは特定施設の職員、生活背景まで承知している診療所医師などの間で「予測立てた判断」がされているため、日中の中で入院紹介などが可能となっているためです。
 むしろ自然にそうなっている、そうなっていく実践の重みに私は教えられています。
 そうした中で「とよひら・りんく」の広報紙がこのほど創刊されました。
 特定施設などの紹介と連携関係に入ることで期待したいことなどの紹介に配慮されています。
 連携関係の広がりを地域で実現し、そしてお互いの役割を知り合うことを大切にしていく積み重ねが大切なのだとあらためて感じています。

 先日、ある地域で強化型在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院の実施に向けた提案をさせていただく機会を得ました。
 それぞれが持っている医療介護サービスと、持ち合わせていないサービスを補えることで、在宅支援のサービスをより多彩に組み合わせることができないかという関係者の思いを背景に提案させていただきました。
 そこで強く感じたことは関係者の誠実な姿勢です。
 もっとはっきりと在宅療養支援を地域に打ち出したい。
 しかし深夜等の業務が加わると医師、看護職員をますます疲弊させないかという当たり前のためらいを持ちながら、「どうすれば無理のない形で対応することができるのか、それを知りたい」というメッセージをひしひしと感じさせていただきました。
 おそらく全国各地でこういった取り組みの準備や話し合いがされていると思います。
 このような地についた議論の中から地域包括ケアシステムは成立していくのではないかと思います。
 その際、やはり「橋渡し」機能を担当できる病院の存在の有無は大きいとも感じています。
 都市における「地域一般病棟(病院)」の意義を痛感しています。