「働きやすい勤務環境づくり研修」が7月17日、北海道看護協会(平山妙子会長)主催の下、札幌市で行われました。当日、講師を担当された日本看護協会労働政策部看護労働・確保対策担当専門職の奥村元子さんから当日の講義内容のポイントについて寄稿をいただきましたので紹介します。
 看護管理職にとどまらず、病院経営管理職の皆さんに勤務体制に対する関心を持っていただけたらと感じています(メディウェルログ編集部 古川)。


【勤務編成基準】ハードル高い項目:3交代→「正循環」「勤務間隔11時間以上」 2交代→「勤務拘束時間13時間以内」】
 日本看護協会が2013年に公表した「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」は、職能団体が示した交代制勤務の見直し・改善の方向性と改善目標です。
 2014年の年明けに、全国8,633病院を対象に実施したガイドラインの普及状況調査(回答病院3564(北海道259)、回収率41.3%)では、96%の病院がガイドラインを「知っている」と回答、おかげ様で多くの現場の皆様が「ガイドライン」に関心を持ち、意識していただいていることがわかりました。

 「勤務編成の基準」11項目のうち、「ガイドライン」公表前から「実施済み」の率が高い項目は「休憩時間確保」連続夜勤2回まで」「1回の夜勤後24時間以上の休息確保」などです。
 一方で実施のハードルが高い項目もあり、3交代での「正循環」「勤務間隔11時間以上」、2交代での「勤務拘束時間13時間以内」は、予想通りではありますが、引き続き現場でのお取組みに役立つ情報の提供に努めていかなくてはならないと思っています。

 講義の中では、実際に看護管理者から頂いたご質問に答える形で、16時間夜勤を短縮(拘束時間12〜13時間に)するにあたってのポイントをご紹介しました。勤務体制の変更により、所定労働時間や手当支給基準の見直しが必要になることもあり、看護部門と人事労務管理担当部門との上手な連携が必要です。なによりも看護職員の生活時間に大きな影響を及ぼすので、それぞれの病院がおかれた環境(通勤事情など)や、職員の家庭状況・勤務希望の状況などに総合的に目配りする必要があります。

 おそらくは過去の様々な経緯から、看護部主導の勤務体制変更に看護職員が強い抵抗感を示すこともあります。抵抗感の背景に、日ごろの労働時間管理や人事評価の在り方への不満や、場合によっては病院側への不信感が隠れていることもあるようです。
 「何をやっても今よりましになるとは思えない」というスタッフの声があるのなら、勤務体制の見直しよりも、労働時間管理の現状点検と職員から見て納得感があるように見直すことが先かもしれないのです。
 どうぞ看護管理者の皆様、人事労務管理ご担当の皆様には、この点についていまいちど意識していただきたくお願いいたします。

 現在の「16時間夜勤」には、二つのルーツがあります。
 ひとつは、3交代制からの変更で、「日勤ー深夜勤」などのシフトの辛さを何とか軽減しようと「準夜勤ー深夜勤」連続勤務する「16時間夜勤」を作ったルート。
 もうひとつが、当直制からその拘束時間をそのまま16時間の夜勤に転換したルート。これは、1990年の「特例許可老人病棟入院医療管理料」(老人のまるめ入院料)創設から1994年の健康保険法改正(付き添い看護療養費廃止・新看護創設)を経て、当時「基準看護」要件に沿う3交代制が取れずにいた病院が、現実的な選択としておこなったものです。

 いずれの16時間夜勤も、夜勤・交代制勤務に就く看護職員が何とか働きやすくなるようにとの様々な苦悩・工夫の末の選択だったはずです。それなりの利点もあり、長年なじんだ勤務体制の変更が容易でないことは、とてもよくわかります。しかし、16時間夜勤の負担の重さや健康への影響が次第にわかってきたこともあり、16時間夜勤が「現状で代替すべきもののない最も優れた体制」とは言えなくなっていると考えます。つまり、現段階は「よりよい勤務体制の模索の途上」であり、16時間夜勤も近い将来に塗り替えられるべき歴史の1ページだと見ています。

(日本看護協会労働政策部看護労働・確保対策担当専門職 
奥村元子さんより寄稿)